長編 カカシ

□諦めた恋
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「あれ?なつどこ行ったの?」

皆にもみじを紹介するのに忙しくしていたら、いつの間にか隣にいたなつが消えていた。

「外にコーヒー飲みに行くって出ていきましたよ。」

人混みの奥の方で立っていたヤマトに呆れられるように言われる。

「あ、そう…。」

今日の帰りにでもこの間の約束どうかなって言おうとしたんだけどな…。

「じゃ、オレもたまには外でコーヒーでも飲もうかな…。」

「あ、コーヒーなら私淹れますよ、結構得意なんで。」

「あ、そう…。」

参っちゃったね、どーも…。

「カカシ先輩、今連絡があって、今日は僕となつと任務一緒らしいですよ。三十分後に出発です。国境近くの漁港で忍具の貿易があるらしいんですが、正規の取引に混じって不正貿易をする輩がいるらしいんで、その連中の確保と一般人の保護が目的です。もみじ、君も急いで仕度して。」

「…せっかく帰ってきたのに、また国境まで行かないといけないのね。これなら、あまり里に帰ってきた意味、ないわね。」

「ま、お前がやってた国を直接的に守る仕事とはまた違うよ。不正貿易って、法外な値段の取引、粗悪品、認可されてない薬草や、それこそヤバイ薬持ち込んで闇で売ったり…。それを防ぐのも国を守る事と一緒だよ。コーヒー飲んだら行こっか。」

「…そうなんですね、了解です。」

テンゾウがもみじの発言に少々不満そうな顔をしたので、すかさずフォローを入れる。お前が言いたいのはこういうことでしょ。ホント、真面目なんだから。オレのアイコンタクトにテンゾウは苦い顔をしつつも納得してくれたようだ。

「…じゃあ僕、なつ呼んで来ますね。」

今日はなつと久々の任務か。またあの照れたような笑顔を見られるのだろうか。そう考えると不謹慎ながら任務も少し楽しみになってしまう。

「カカシさん、何だか嬉しそう。」

もみじに指摘されて自分の顔が緩んでいることにハッとする。

でもオレはこの時まだ何も知らなかったんだ。自分この高揚する気持ちとは裏腹に、なつが今、一人で何を考えているのかなんて…。
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