長編 カカシ

□旧友
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「さぁ、皆準備はいいかい?」

「潮風で髪がベタベタね。早く帰りたいわ。」

「この捕まえた奴らを里に持って帰るのが何とも面倒だねー。」

皆で身支度をし、港で任務完了の最終確認をする。
なつは黙々と押収した不正貿易の証拠品の点検をしている。

「…はい!大丈夫、これで全部です!」

満足したようにニコッと笑う顔が可愛い。

「じゃ、帰りますか。」

皆にそう告げて漁港の入り口に向かって歩き出した時だった。

「なつ!!」

港全体に響き渡るような大声でなつの名前を呼ぶ男の声。
オレ達一同は一体何事かと驚いて振り返った。するとそこには一人の男が。
身長はオレと同じくらい。クセのない黒髪がサラサラと風になびいて、時折三白眼の瞳を隠す。あ、三白眼は人のこと言えない、か…。オレもそーだし。格好からして漁師の類いだろうか。身体も程好く締まっていて、中々の男前だった。

…誰だ?

名前を大声で叫ばれた張本人を見ると、大きく目を見開いて唖然としていた。しかしその表情は何か心当たりがあり、酷く動揺している様だ。

「なつ…お前、なつだろ?!覚えてるか、俺のこと!」

「…操…嘘でしょ…。」

「…やっぱりなつだ。すぐわかった!」

みさお…?

オレ達にはその男が誰だか全く分からなかったが、なつは急にポロポロと泣き出した。

その男はなつを確かめる様に彼女の髪に触れ、頬を撫でる。

「本当に操なの?死んだとばっかり…。うっ…どうして…何やって…たの…今まで…。私…ずっと探してっ…。」

「それはこっちの台詞だ。お前も生きてたのか…そうか。俺は…見ての通りずっと魚釣ってたよ。悪ぃ、ずっと帰れなくて…。」

「ちょ…ちょっと待ってチョーダイ。なつ、この人誰なの?知り合い?全く話が見えないんだけど。」

何、焦ってんのオレ…。少々カッコ悪いけど聞かずにはいられない。男はオレの心を読み取ったのか、その鋭い眼でじろりとオレを睨んだ。

「…ヤマトさん。彼、あの時の…行方不明の…。」

「なんだって!?まさか、そんな…。」

「ちょっと…ちゃんと説明してよ。疎外感がスゴいんだけど…。」

「俺が説明するよ。どっちみち連れて帰って貰わないといけないし。」

男が真剣な顔でオレの方を向いた。
…なーんか…とんでもないことになっちゃったねぇ。今日はなつを誘ってる時間はないな…。
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