長編 カカシ

□拒絶
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「正真正銘のバカですね、カカシ先輩は。」

「まぁー、アイツはイイ女だからなー…やりたくなるカカシさんの気持ちはわかる。」

「またそんな身も蓋もないこと言って!僕にはサッパリ理解できません!全く、どうしてそういうことしちゃうかなぁぁあもうっ!」

「…面目ない。」

場所は居酒屋。頭を抱え悶絶するテンゾウに対し、終始冷静に酒を飲むゲンマ。その二人を前に項垂れる、オレ。

「なつ、すぐ部屋から出て行っちゃって…。気まずいよねそりゃ…。」

「なつと言えば…あの漁師の男、明後日には帰るらしいっすよ。」

「え、そうなんですか?」

「あぁ、五代目から聞いたから確かです。明後日操が帰るのに、俺は途中まで同行することになってるんですよ。」

「特上が護衛とは、一般人にずい分手厚いんですね。」

「まぁ元々彼は火の国の人間だし事件の犠牲者ですから、五代目も気を遣っておられるんでしょうね。で、カカシさんはどうするんすか?」

「え…どうするって、何を?」

「何をって…。だから、なつがアイツと一緒に行かないってことは、なつは里に残るってことですよ?二人の間には何もなかったか、あったとしても交渉決裂って事です。まぁ後からついて行くとか、そういうことも無きにしもあらずですけど。」

「う〜ん…。もう、オレわかんない。」

「あ、考えるの辞めたな。」

「だって…まぁ、二人に何もなかったとしたら、オレにとっては願ったり叶ったりなんだけど。だからって今のオレがなつにどうこう言えないでしょ…。」

「まぁ、確かに。」

「多分…なつは今日の時点で、オレともみじは付き合うことになったんだとか思ってるでしょ?」

「今日の経緯を聞いてると、おそらくそう思ってるでしょうね。」

「付き合ってない、やりたかっただけなんだって正直に言ったらいい?付き合ってる、もみじが好きなんだって嘘言ったらいい?何も言わないで黙ってた方がいい?それとも、もみじとやることやったのは事実だけど、好きなのは実はお前なんだって言えばいい?オレ、絶対振られるよね、ソレ。」

「……何か、八方塞がりッスね。」

「自業自得です。」

「はぁ…。オレ、何でこんなに素直じゃないのかな…。」

「カカシさん、今まで女性のことで悩んだことなんてなかったでしょ。それだけなつに本気ってことでしょうね。まぁ散々悩んで下さいよ、俺達は見ていてものすごく面白いですから。」

「…ゲンマお前ね…。」

まぁ、でも…。確かにゲンマの言う通りだ。
オレは女性に関して言うと、今まで特に苦労した記憶がない。というか、元々あまり興味がなかったと言った方が正しい。特別決まった人も居なかったし、なんなら相手がオレに言い寄ってきて、後腐れなくって言うのがお約束だった。それで変な噂が立ったこともなかったし…。それって相手もオレの事、程々だと思ってたって事だね。

「…はぁ…なんか自分の人生が悲しくなってきたから今日は帰る。お先。」

「嫌ですねぇ〜なんか女々しくなっちゃって。カカシ先輩らしくないなぁ。」

「いや、意外と昔からあぁいうところありましたよ?まぁそこがちょっと可愛かったりするんですけど。」

「…おやすみ。」

二人のからかいにムスッとしつつも、会計は人数分済ませて店を出る。話を聞いてくれたお礼のつもりだ。

誤魔化す事ばかり考えても駄目だ。
とにかくなつに会わなければ。なつに会って自分の気持ちを話さなければいけないんだ。

「…いざ面と向かって好きなんて言えるのかな、オレ。柄じゃないよね。」

外に出ると満天の星空。最近空を見上げて思い浮かべるのは、いつも決まってなつの顔。なつ、オレがお前のこと好きだって言ったら喜んでくれるの?
夜空に浮かぶオレが作り上げたなつは何も言わない。
オレの一番のお気に入りの笑顔で、ただニコニコ笑ってこちらを見ているだけだった。
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