過去の拍手話

□3…常備薬
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パキ、パリ。
…ごくん。



隆がキッチンで薬を飲んでた。


「どしたの?具合悪い?」

「うーん…。なんか頭痛くて。頭痛薬飲んだ」

ゆるゆると頭を振りながら、力無く言うから。おいで、と腕を広げると、擦り寄るように俺の懐におさまった隆。
しばらくモゾモゾと動いていたけど、収まりの良いところが見つかったようで、ピタリとくっ付いた。


(熱は…なさそうかな?)

抱きしめる身体は、いつもと同じように感じる。


「隆ちゃん、ベッド行く?少し寝たら?」

抱きしめたまま、腕の中の隆ちゃんに話かけたら。またゆるゆると頭を振った。


「ここがいい。」

「ん?」

「頭痛薬より、こっちのが、効く」


モゾ…と顔を上げて目が合う。


「イノちゃんの匂い」


隆の目と唇が、細い三日月のように弧を描く。


「治して?」



俺の方が、熱が出そうだ。





end
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