過去の拍手話

□4…揺れる(海)
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…………

朝起きてすぐ、ベッドの上で隆が呟いた。



「イノちゃん。海、行きたい。」


「うん?いいよ、今日オフだし。行こうか」


「うん。」




簡単に朝食を済ませて、家をでる。
隆はなんだか、ぼんやりしてるから。
手を繋いで駐車場まで歩く。


…今朝は口数、少ないなぁ。


珍しい。いつもは朝からフル回転なのに。
何か、あったのかな。


助手席に隆を乗せて、いつもの海岸まで、車を走らせる。

いい天気だ。風も、穏やかで。



海岸に着いて、車を停める。
ここは、砂浜に駐車スペースが何となくある感じのところだから、気楽だ。




「隆ちゃん着いたよ」


「ん…」


隆は眠っていたみたいで、何度か目を瞬かせて、ゆっくり顔を上げた。

やっぱり、何かあったのかな。
いつもなら、眠るなんてもったいない、なんて言うのに。




「ありがとう、イノちゃん」


「ん、いいよ。行こ?」


「うん」



手を繋いで、砂浜を進む。


今日は潮風も、穏やかだ。


波打ち際で、隆が足を止める。
止めた途端に、堰を切ったように、溢れ出した。

涙。


「隆ちゃん、」


「っ…」


「…どうした?」


「……っ、ぅ」


「…隆ちゃん。」


「…っ…」


「俺に出来る事ね、こんくらいなんだけど」



後ろから、抱きしめる。




「ここにいるよ?」





your place .




end
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