長いお話《連載》

□5…セピア色。
1ページ/3ページ






撮影スタジオに到着すると、何だかスタッフ達がバタバタしている。
それと、3人の姿が見当たらない。
何かあったのかと、近くに居たスタッフに声を掛ける。

「ああ〜良かった!お2人だけでも来てくれて!」

仕事なんだから、来るのは当たり前じゃ…という疑問の表情に、スタッフはさらに続ける。

「イヤ、なんでもスギゾーさん達、昨夜ひどく呑んだらしくて…。二日酔いでフラフラだわ、本調子じゃないわで、遅れるみたいで…」

「あー…。何やってんだか」


呆れ顔のイノランに隆一は苦笑し、スタッフに向き直る。


「じゃあ、俺達のピンの撮影からする?その間に来られればいいんだけど」

「はい、到着早々申し訳無いです。さっそくメイク行ってください。」



メイクをして衣装に着替えて。それでも、まだ来ない。

隆一の撮影をして、イノランが終わっても。まだ3人が現れる様子は無い。
もう後は、待つ以外どうしようもなくて、2人でお互いのフォトチェックをしている時に。
フト、カメラマンが言った。


「お2人、仲良いんですね。」

「え?」

「にこにこしてますもん、ずっと。」

「…そうなんだ」

「無意識だね」

「ね。」

「撮りましょうか?良かったら、時間あるし」

「え?」

「記念写真、お2人で。なかなか、できないッスよ?」

イノランと隆一は、顔を見合わせてしばらく逡巡したが、小さく頷くと、カメラマンにニコリと笑いかけた。


突如始まった、大変珍しい撮影に。
他のスタッフ達も興味津々といった様子で集まって来る。


「なんか、ポーズとります?」

イノランは少し考えたが、小さく首を振る。

「いや、いいッス。もう、棒立ちで」

周囲から笑いが起こる。
特にポーズもなく、ただ2人並んで。
いつもの撮影と違って、何だか照れ臭くって。表情も身体も強張ってしまう。

数枚シャッターをきるも。カメラマンは苦笑いで。

「表情固いッス〜!つーか、七五三みたいですよ、もうちょっとリラックスしてください〜」

隆一さん、イノランさん!笑って、笑って‼と周囲から声が飛んで。
隆一はますます意識してしまって、力が入る。

「そんなこと言ったって、いつもと勝手が違うから…」

緊張するよ。と呟いた隆一の声で、イノランはチラリと隣を見ると。
自分の左側に立つ、隆一の手を。指を絡ませて、そっと繋いだ。
一瞬びっくりして、でもフッと表情が和らぐ、そんな隆一を。それを見守るようなイノランの表情に、カメラマンはここぞ。とシャッターをきる。


「はい、OK‼良いッスね、雰囲気最高!後で現像したらプレゼントしますね!」

「どうもありがとう!」

「こういう記念写真なんて、いつ撮ったか忘れちゃってるくらいだから、嬉しいね」

「うん…成人式?……あれ?行った?」

「……レコーディングしてたかも?」

「そうだね」

また2人顔を合わせて、くすくすと笑うイノランと隆一に。周囲の空気がふんわりと和らぐ。

「ホンット仲良いんスね!何かみんな、空気にあてられてホンワカしてます」


そんな風に言われると、隆一は照れてしまって、ほんのりと顔が熱くなる。そっと隣に立つイノランを窺うと、相変わらず優しい眼差しで、隆一を見てる。目が合ったから、隆一も小さく微笑みかけた。

その時、バタバタと騒がしい声と足音が聞こえたと思ったら。ようやく3人のメンバーが駆け込んで来た。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ