長いお話《連載》

□10…いっしょにいようよ。
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あの後、何度も求め合って、身体を重ねて。ライブの後だったこともあって、声に限界がきた隆一。
2人が苦笑を零して、ようやく身体を離した。

時計を見れば、もう朝の6時で。
一晩中愛し合っていたことに気がついて。今度は2人して、噴き出すように笑った。


「隆ちゃん、大丈夫?」

「うん。…まぁ、さすがにちょっと、疲れたけど」

「…だよね。喉は?」

「ちゃんとケアするからヘイキ!しばらくライブも無いしね。…イノちゃんは?」

「俺は大丈夫だよ」

「………腰は?」

「もうっ隆ちゃん!照れるから!」

「だってぇ、イノちゃんすごいんだもん」

「りゅう〜っ!」

「でもホントだよ?気持ちよくて、幸せで…」

「ーーー……」

「イノちゃんも…俺とこうなって幸せ、って思ってくれてたら…いいな」


イノランを窺うように。どことなく、複雑な想いの混ざった声で、隆一が呟く。
不安気な声が、イノランの耳に響く。
その声と表情で、隆一の気持ちが痛い程わかってしまった。


好きだと、自覚した時から。
迷いながらも、いつかこうなる事を、夢見たときから。
世間や常識、仕事仲間として…駄目だったらどうしよう…とか。
そんなの散々悩んできたけれど。

勝るものは、無かった。
隆一の存在に。


好きで、好きで。大切な人。



「幸せに、決まってんじゃんっ」


目の前の身体を、力いっぱい抱きしめる。隆一がふるり…と震えるのがわかった。



「隆ちゃんが言ってくれた言葉、すっげぇ嬉しかった。ーーー俺のこと、好きだって言ってくれる。いつだってキラキラしたかわいい笑顔をくれる。きれいな声を聴かせてくれる。」

「………っ」

「俺のものになってくれる…なんてさ。幸せ過ぎてどうにかなっちゃうよ」

「イノ…」

泣き顔に歪みそうな、イノランの笑顔。それを間近で見て、隆一は悟る。イノランの、ここに至るまでの葛藤と。どれ程自分を、大切に想ってくれているかを。

愛おしい気持ちが、膨れ上がる。
力が溢れてくる。


「ね、イノちゃん。この気持ちがあれば、何でも出来るって気がするね?」

「うん、ホント、そう」

「好きっていう気持ちって…すごいね」

「うん。…ーーーーーーね、隆?」

「ん?」

「色んなこと、しようね。音楽でも日々のことでもさ?隆とこうなって、すごく世界が広がった感じがする。
隆と色んなこと経験したいし、楽しみたい」

「うんっ!」


顔を見合わせて、笑い合って。イノランは手近のシーツを引き寄せて、隆一の肩に掛けてやった。

そして、隆ちゃん…と、もう一度抱きよせる。

「隆ちゃん」

「ん?」

「隆ちゃん…」

「なぁに?」


黒髪に、唇を寄せて囁く。
ひどく優しくて、すこし掠れた声で。



「愛してるよ」


隆一が何かを言う前に、唇を塞ぐ。
音をたてて、何度もキスを交わす。

隆一の、シーツの端を握る手が震えてくる頃、そっと口づけを解いて。イノランはもう一度囁いた。


「隆…愛してる」



「………」

「……………」

「………」

「……えっと……。…う…嬉しい…ですか?」


隆一から反応が返ってこなくて、イノランは少しばかり不安になって。
そっと…隆一の表情を覗き込む。

髪の隙間から見える、真っ赤になった隆一。
それを見てイノランは、なんだか可笑しくなって、くっくっ…と笑ってしまった。
あんなに愛の歌を歌うくせに。いざ自分が言われると、こんなにかわいい反応を見せてくれるのかと。にこにこしてしまう。


「この言葉ってさ、特別じゃん?俺は今、すっごく言いたいと思って言ったから…」


コクリと隆一が頷く。


「隆ちゃんも、言いたいって思ってくれた時、言ってほしいな」

いい? と隆一の頬に手を添えて問いかけると。
頬を染めたまま、ゆっくり顔を上げて頷いた。



「俺も、ちゃんと言いたい」

「うん」

「だから…楽しみにしててね?」
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