長いお話《連載》
□10…いっしょにいようよ。
1ページ/3ページ
あの後、何度も求め合って、身体を重ねて。ライブの後だったこともあって、声に限界がきた隆一。
2人が苦笑を零して、ようやく身体を離した。
時計を見れば、もう朝の6時で。
一晩中愛し合っていたことに気がついて。今度は2人して、噴き出すように笑った。
「隆ちゃん、大丈夫?」
「うん。…まぁ、さすがにちょっと、疲れたけど」
「…だよね。喉は?」
「ちゃんとケアするからヘイキ!しばらくライブも無いしね。…イノちゃんは?」
「俺は大丈夫だよ」
「………腰は?」
「もうっ隆ちゃん!照れるから!」
「だってぇ、イノちゃんすごいんだもん」
「りゅう〜っ!」
「でもホントだよ?気持ちよくて、幸せで…」
「ーーー……」
「イノちゃんも…俺とこうなって幸せ、って思ってくれてたら…いいな」
イノランを窺うように。どことなく、複雑な想いの混ざった声で、隆一が呟く。
不安気な声が、イノランの耳に響く。
その声と表情で、隆一の気持ちが痛い程わかってしまった。
好きだと、自覚した時から。
迷いながらも、いつかこうなる事を、夢見たときから。
世間や常識、仕事仲間として…駄目だったらどうしよう…とか。
そんなの散々悩んできたけれど。
勝るものは、無かった。
隆一の存在に。
好きで、好きで。大切な人。
「幸せに、決まってんじゃんっ」
目の前の身体を、力いっぱい抱きしめる。隆一がふるり…と震えるのがわかった。
「隆ちゃんが言ってくれた言葉、すっげぇ嬉しかった。ーーー俺のこと、好きだって言ってくれる。いつだってキラキラしたかわいい笑顔をくれる。きれいな声を聴かせてくれる。」
「………っ」
「俺のものになってくれる…なんてさ。幸せ過ぎてどうにかなっちゃうよ」
「イノ…」
泣き顔に歪みそうな、イノランの笑顔。それを間近で見て、隆一は悟る。イノランの、ここに至るまでの葛藤と。どれ程自分を、大切に想ってくれているかを。
愛おしい気持ちが、膨れ上がる。
力が溢れてくる。
「ね、イノちゃん。この気持ちがあれば、何でも出来るって気がするね?」
「うん、ホント、そう」
「好きっていう気持ちって…すごいね」
「うん。…ーーーーーーね、隆?」
「ん?」
「色んなこと、しようね。音楽でも日々のことでもさ?隆とこうなって、すごく世界が広がった感じがする。
隆と色んなこと経験したいし、楽しみたい」
「うんっ!」
顔を見合わせて、笑い合って。イノランは手近のシーツを引き寄せて、隆一の肩に掛けてやった。
そして、隆ちゃん…と、もう一度抱きよせる。
「隆ちゃん」
「ん?」
「隆ちゃん…」
「なぁに?」
黒髪に、唇を寄せて囁く。
ひどく優しくて、すこし掠れた声で。
「愛してるよ」
隆一が何かを言う前に、唇を塞ぐ。
音をたてて、何度もキスを交わす。
隆一の、シーツの端を握る手が震えてくる頃、そっと口づけを解いて。イノランはもう一度囁いた。
「隆…愛してる」
「………」
「……………」
「………」
「……えっと……。…う…嬉しい…ですか?」
隆一から反応が返ってこなくて、イノランは少しばかり不安になって。
そっと…隆一の表情を覗き込む。
髪の隙間から見える、真っ赤になった隆一。
それを見てイノランは、なんだか可笑しくなって、くっくっ…と笑ってしまった。
あんなに愛の歌を歌うくせに。いざ自分が言われると、こんなにかわいい反応を見せてくれるのかと。にこにこしてしまう。
「この言葉ってさ、特別じゃん?俺は今、すっごく言いたいと思って言ったから…」
コクリと隆一が頷く。
「隆ちゃんも、言いたいって思ってくれた時、言ってほしいな」
いい? と隆一の頬に手を添えて問いかけると。
頬を染めたまま、ゆっくり顔を上げて頷いた。
「俺も、ちゃんと言いたい」
「うん」
「だから…楽しみにしててね?」