長編さんです
□受け止める勇気
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【鈴本side】
鈴本「………平手………?」
〇〇「……」
鈴本「平手?」
暗くてよく見えないよ。本当に平手なのかな?でも平手は…。まずとにかく近づこう。私はそう思って徐々に距離を詰めて行った。
あ、もう少しで顔が…やっと…
パチンッ
♢ ♢ ♢
気づいたら私は家の前でぺたーっと女の子座りをしていた。あれ?平手は?ヴァンパイアは?なんで家の前?
パチンッって音がしてからの記憶がない。あれれ…
ママ「美愉何してるの?早くおうちはいって!」
鈴本「あ…うん。」
ご飯とお風呂を済ませて、ベットに身を投げ出す。
鈴本「はぁ…」
あれはだれだったんだ?平手じゃないのか?でもそれなら血を吸われていたんじゃないのか?でもヴァンパイアってどこの血を吸うんだ?
鈴本「もうっ!わかんない!」
もう今日はとりあえず寝よう。明日愛佳と理佐に聞けば分かる…はず
♢ ♢ ♢
鈴本「ねぇねぇ、愛佳。愛佳とか理佐って近くにヴァンパイアがいたらなんか匂いとかで、わかっちゃう?」
志田「うん、分かるよ」
鈴本「ヴァンパイアって指パッチンで寝かせることとかできる?」
渡邉「まぁ、すこし気を失わせるぐらいなら。あ、寝かせるってことだよ?」
志田「なぁーにもんちゃん。いつもそんなこと聞いてこないのに。聞きたいことあるんならちゃんとはっきりいいなよ」
ジューっとコップの中のフラペチーノを飲む愛佳。
鈴本「んじゃ言うけどさ」
渡邉「うん。」
鈴本「あのさ、平手ってヴァンパイア?」
志田「…はい?」
渡邉「ん?」
志田「もう1回言ってみて」
鈴本「だから…平手はヴァンパイアなの?って」
2人は目をパチクリさせて見つめあってる。驚いてる2人をみて、なんだか平手は本当にヴァンパイア何じゃないかなって思い始めた。理佐は慎重に自分の手を重ねて、私を真っ直ぐな瞳で見つめてきた。
渡邉「…昨日なにかあったの?」
理佐はそういうと驚いてませんよとでもいいたそうに余裕の表情を浮かべた。その顔は優しくてどこかお母さんみたいだ。
鈴本「それがね…」
私は事細かに説明した。夜遅く帰ってたこと。2人に似た人をみたこと。それが平手だと思うこと…。
志田「ふーん。なんで平手だと思うの?」
鈴本「…なんだろ。スマホを落としたときに目が合って。そのとき、あ、平手だって思っちゃってそこから平手以外だと考えられなくて。」
渡邉「そっか…。でも今回は何もされなかったからよかったけど、今度からは絶対私か愛佳を呼んで。たぶん携帯で呼ばなくても少し名前呼んでくれればすぐ行けるから。」
えぇ、そんなに耳がいいのかい君たちは。なら早くそう言ってくれよ。必死になってスマホいじったじゃないか。
志田「あのねもんちゃん。私たちの口から人なのかヴァンパイアなのかいうことはできないんだ。それがたとえ人だとしてもね」
渡邉「もし、ばらすようなことをすると私たちはこの人間界にいられなくなってしまうからね。」
志田「だから、平手に確認するといいよ。今家にいる。」
鈴本「なんでわかるの?」
渡邉「匂いだよ。」
聴覚も優れて嗅覚もすごいとは…
志田「今から走るの大変でしょ?飛ばしてあげよっか」
鈴本「飛ばすっ?」
志田「3・2・1。はい」
途端に愛佳の指パッチンで体が宙に浮いた。ふわっと浮いて目を開けるとそこは平手の家の前。
ヴァンパイアさん、敵いません。
私はなれた手つきでチャイムを押した。そしたらはーいと声がして、ガチャっとドアが開いた。
平手「おっ!美愉じゃん。どうしたの」
鈴本「ちょっと話がしたくて。はいってもいい?」
汚いけどいいのー?なんていうから全然っ!って返して平手家の階段を登る。いつも入っている平手の部屋に入るのが今日は少し怖い。
平手「んで今日はどうしたのー?」
ん?お茶ってお茶を出してくれた平手。今日はいつもとはちがって真剣に話をしたいんだ。
少し言いづらくて沈黙する。平手はいつもみたいにバカ話でもするのかと思っているのかニコニコして私の顔を伺っている。
鈴本「ごめんね単刀直入にいうね。」
平手「…ん?」
鈴本「昨日のやつ…平手…だよね?」
私がそう平手に言い放ったとき、平手は目を大きく見開いた。
平手「な、なんのこと?」
鈴本「平手じゃないの?」
1度言ってしまった流れだ。もう間髪もいれずに進もう。そして平手は俯いて重い口を開いた。
平手「…見られちゃったのか。私だよ昨日の。まさか美愉に見られたとは」
そうすると平手は悲しい目をして少し微笑んだ。そして躊躇なく私の頭の前に手を出した。私はなんとなくなにされるか分かったため、力づくで平手をとめる。
鈴本「平手!今!私の記憶消そうとしたでしょ」
出会いたてのとき、愛佳が言ってた。ヴァンパイアは相手の記憶を消すこともできるって。でも使うとすんごい疲れるって。それだけ大変なんだって。
平手「っ!?なんでわかったの?まぁそんなこといいか。どうせ忘れるんだし。」
鈴本「やめて平手!お願い私の言うこと聞いて」
私の力で平手にかなうはずないが、力いっぱい両手に力を込める。それをみた平手はもう片方の手で私の頭を撫でた。
平手「なーに。」
そういうと平手は私の頭に向けた手を膝の上にのせ、私と向き直した。そして私はゆっくり平手に思いのうちを明かした。
鈴本「私は…平手のことすきなの。ずぅっーと前から…好き…だったの。だからどんな平手も受け止めたいって思ってるんだ。だから…」
そういうと、平手は私の手をとって自分の手に包んだ。
平手「美愉。ヴァンパイアってそんなにいいもんじゃない。まだまだ美愉が知らないことがたくさんある。」
鈴本「でっでも、まず平手のお返事聞きたい。」
私は今一世一代の告白をしたんだ。話の流れでぽろっとでちゃったけど、でも平手を思う気持ちは変わらないから。
平手「私は美愉のことそういう意味で好きだよ。…でも付き合えない。だって私はヴァンパイアだから。私のほうがずぅっーと前から好きだった美愉のこと。でもね、美愉をこっちの世界に引き込みたくないんだ。いいよ、私の事なんて忘れて」
もうここまで来たんだ。振られるまで私は諦めたくない。平手がヴァンパイアだからってなんだ。愛佳と理佐の時も怖いなんて思わなかったじゃないか。
鈴本「いいよお願い平手。平手がヴァンパイアでもなんでもいいよ。私は平手と…」
平手「美愉…。もうわかったから。でもね。私は美愉に嫌われるのが1番嫌なんだ。美愉のそばにいたい。だから…」
鈴本「離れないよ。今まで通りずっと一緒にいる。だからお願い、平手の全部…みせて」
平手ははあーっとため息をついた。
平手「今の発言…後悔するよ?」
鈴本「…しないよ。」
平手「痛い思いするよ?」
鈴本「…ひ、平手にされるならいいもん」
平手「……」
そうすると平手は私の手をひいて自分のベットに座らせた。そして全身に力を入れて目を閉じる。
平手「んっ…!」
ビキビキッて血管がうきでてたちまち翼がはえた。そのとき平手の背中が沿って角みたいなのもはえた。沿った上半身を起こして前かがみになったとおもったら今度は爪が伸びて…。そしてゆっくり、目を開けると瞳が赤くなっていてあ、平手は本当にヴァンパイアなんだなって自覚する。
平手「…どう?」
どう?と私に心情をきく平手はホンモノのヴァンパイアで…。変身するときすごく苦しそうだった。
鈴本「っ!平手変身する時苦しいの?」
平手「いや、別に。ただ力をいれるから苦しくみえるだけ。そこじゃなくて。怖いでしょ?逃げていいよ。」
鈴本「全然怖くないよ。」
平手「嘘。脚震えてるよ」
そういって平手が私の脚を爪で一撫でする。なんかいつものかわいい平手じゃなくてかっこいい平手がいる。なんか愛佳と理佐にもそんなこと思ったなぁ。
鈴本「ちっちがう。見慣れてないから。でも…」
私は平手の頬に手を当てた。雰囲気はかわってもやっぱりいつもの平手だ。
鈴本「やっぱり好きだなぁ。」
平手「…はぁ?」
なんだか平手の新しい1面を知れて、急に嬉しくなって平手の胸に飛びつく。平手はびっくりしてるけど、いつも通り私を胸の中におさめた。
鈴本「…平手はさっきいってたこと本当?」
平手「うん、嘘じゃないよ。会った時からすき。大好き」
鈴本「ちょっ…耳元で言わないでよ」
平手「ふふ、小さい頃から変わんないね笑」
そうして平手は私の頭を撫でる。私は小さい頃からこの体制が凄い好きでよく泣きたいときとかは平手の家にきてこうさせて貰ってた。
鈴本「ねぇ平手。私やっぱり…付き合いたい。私平手しか好きになれない気がするの。平手のこんな姿みても全然嫌いになんてなれない。」
平手「私は美愉と付き合えたら幸せだよ。嬉しいよ。いろんなことしたいよ。でもねさっきもいったけど美愉には迷惑をかけたくない。私はヴァンパイアなの。当たり前だけど好きになって付き合った人の血を飲まないといきていけない。だから美愉が他の人を好きになったら私は美愉を手放さなくちゃいけない。そしたら干からびて死ぬだけ。だって好きじゃない人の血を吸うなんて嫌だから」
鈴本「…大丈夫。そんなことない。私にも平手しかいないの。本当に。だからさ…!ね!平手!」
平手「…あんまりこれ以上私を誘惑しないで。今の体制でも美愉が可愛すぎて襲いたくなっちゃいそうなの。笑」
鈴本「へっ変態っ!笑」
この雰囲気でそんなことをいう平手はどこか子供っぽい。私をなだめようとしてるのか平手なりにこの空気を収めようとしてるのか…。
平手「仕方ないでしょヴァンパイアなんだから。それでもいいならいいけど」
鈴本「いいよ!だって平手なのは変わらないでしょ?」
平手「…ふふっ。やっぱ叶わないや。」
そう笑って平手は私から少し離れた。
鈴本「んじゃいいってこと?」
平手「うん。よろしくね。でも別れたいなってなったら教えて。すぐにでも…」
鈴本「コラっ。そんなことないから」
平手「そう。んじゃよろしくね。可愛い可愛い彼女さん」
つづく