欅坂

□モテモテ
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【小林side】








渡邉さん。
同い年で、成績優秀、スポーツ万能、ルックス良しの三拍子。
噂を聞くと渡邉さんのことをすきな人は多いから本当にいい人なんだとは思う。
そして私も渡邉さんに一目惚れした1人。



それは、中学校の友達が出るって話してた高校生バレー大会で「あ、うちの高校だ」ってみたときだった。
渡邉さんが所属してるバレー部は
結構な人数がいて。
その中でも渡邉さんに目がいく、って
なんかそれってもう、本当に一目惚れじゃんって。
だって、志田さんやら一個下の平手さんやら他に可愛い子はたくさんいるのにその中でも渡邉さんに目が行くなんて。





渡邉さんとは一緒のクラスってだけが唯一のコミュニティ。あ、あと委員会。それ以外、私と渡邉さんを繋ぐものは無い。
あいにく、私は初めての登校日を体調不良で欠席し、友達はつくりそこねてしまったからクラスの陰キャ的な存在だし。





小林「…はぁ」




一方、渡邉さんはこの女子校の中でも有名人だし、クラスでも渡邉さんの一言で何かが決まるぐらい人望があつい。

いまだって、仲良しの志田さんとお昼を楽しんでる。




入学して1年がたとうとしている。なのに友達があまりいない私。あまりって片手で数えるのに十分くらい。




小林「はぁ」


渡邉「由依ちゃん?。…今日の委員会一緒にいかない?」



さっきまで志田さんと一緒にいたのに、窓側の1番奥の私の席までくるなんて…



小林「へっ?!」


渡邉「そ、そんなに驚かないでよ(笑)」




初めて由依ちゃんって呼ばれた…。
きょとんとしてると、渡邉さんはそっと顔を覗き込んで来てその近さに固まってしまう。初めてこんな近くで顔見た。やばい。



小林「い、いいの?」


渡邉「う、うん。…だめかな?」


小林「よろしく…ね」




よかったよかった、って
頭をぽんぽんってされて
胸がきゅって締めつけられる。
あぁー好き。大好き。



渡邉さんにとって私に触れることなんて何気ないかもしれないけど、私にとっちゃそれは心を乱す薬でしかないよ。










それから、私と渡邉さんは委員会の度に話して、笑ってた。
まぁ、渡邉さんの話が面白かったり、もともと同じ空気感だったのかもしれない。渡邉さんといると、ほかの人とも話す機会ができる。…別に私は渡邉さんと話せれば言いけれど。


小林「わたなべさっ…」



渡邉「由依、私、理佐」


小林「あ、ごめ」


渡邉「あやまんなくていい(笑)」



こうやって今も放課後にお話してる。
やっぱり理佐は優しくて、かわいくて、かっこよくて。非の打ち所がないよ。誰でもすきになるって。




そして、最近気になる噂が流れている。それは「理佐に好きな人がいる」ってこと。理佐が女の子をふるときに前は「ごめんね」しか言わなかったのに「ごめん、好きな人ができたから」っていうらしい。



理佐に好かれるなんて、なんて幸せな人なんだろう。こんな学校1モテる人が好きになるって…どんなに素晴らしい人なんだろうと思う。はぁ…いいなぁ。
どうしたら私の気持ちを伝えられるんだろう?
たった好きの2文字で、全部伝わるかなぁ?いや、伝わらないな。
言葉にするのは簡単なのかもしれないけどその中に長い間理佐に片思いしてる私の気持ちを全て込めるのはきっとすごく難しいことで。改めて言葉ってすごいと思う。






渡邉「由依っ!…どうしたの?そんな顔して」


小林「なんでもないよ」


渡邉「なぁに、聞きたい聞きたい」



なんか理佐が余りにも子どもっぽくはしゃぎながら私が話すのを待つもんだから、この際聞いちゃおうかな。




小林「…理佐好きな人…いるの?」


渡邉「あぁ…、そのことか。気にしなくていいんだ…。その人はたぶん私のことそういう目でみてないから」



なぜか理佐はいつもみたことないぐらい複雑な表情をしていた。そして、すぐにふにゃっと、笑ってどうした?って、あやすようにそっと頬を撫でられて、もうすきが止まらない。どうしよう。言ってもいいのかな、わからない。きゅ、って理佐の制服の裾を掴むと理佐はなぁに?って言ってふんわり笑った。



小林「あの、ね。…理佐が困ること言ってもいい?」


渡邉「うん」


小林「理佐のこと、好き、なの。…もうずーっと、一目惚れ、したときから」




言っちゃった。言っちゃった。
ドキドキってうるさいくらい心臓の音が響いて、恥ずかしくて、机の横に掛かっていたカバンをとって、たちあがったとき、ふわっと、理佐の香りに体が包まれた。






渡邉「………かわいすぎ」





こころなしか、ショートカットから出た耳が赤い気がして、私までおかしくなりそう。



渡邉「…由依。私も由依を困らせることいってもいい?」


小林「う、うん」


渡邉「私も、由依のことすきだよ」




抱きしめられてるから、理佐の声が耳を通って頭に直撃する。まだ頭に響いて頭おかしくなりそうで。



恥ずかしそうに笑う理佐はきっと今まで見てきた理佐の中で1番なんじゃないかってぐらいとびきりかわいい。
嬉しくなってぎゅうって抱きつくと理佐は先にいえばよかったなって頭をかいてた。





渡邉「…これからは由依の特別になれるね。うれしい」


小林「私も。」









ガラガラ…






志田「…あ、」


渡邉「ちょ、まな「りっちゃんよかったね〜w」


渡邉「ちょこら、まなかっ!」



まさかの志田さん登場でさっきまでの理佐の温もりがなくなってしまった。
…もうすこし、いたかったなぁ、なんて。




























志田「チキン、よくやった」


渡邉「私のことチキンって呼ばないで愛佳」


志田「りっちゃん、顔とろけてたよ。口角ユルユルで笑」


渡邉「うっさい」


志田「よかったねゆいぽんも理佐のこと好きで」


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