乃木坂

□焦れったい
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【西野side】






「かずやナイシュー」





ここは体育館。今は部活の時間でななはバスケ部をみていた。今日は練習試合らしい。点差は5点ほどしかないが激しい戦いに目が追い付かない。相手チームも必死で体と体が接触して激しさが増していた。



「なーちゃん!」


「かずや」



コートからななに向かって笑顔で手をふる彼は高山かずや。今点を決めてチームメートとハイタッチしとる。手なんかふったらバレるやろ。まったくもう。




かずやはななの初めての彼氏で付き合って半年がたとうとしとった。
ここは大阪やけどガツガツした肉食系じゃなくて草食系男子な雰囲気でへへっと笑顔がとても似合う人やった。高校で出会って、たまたま一緒の委員会になったことで話すようになりその心の広さと雰囲気に惹かれてった。話しかけてくれるけどそこにチャラさはなくただ一人の友達として話しかけてくれるかずやが好きやった。





せやけどだんだんななのほうが友達じゃ嫌になっとって、この気持ちは閉まっておこうと決めとった。そんな時に助け船を出してくれたのはかずやの親友の美彩男君。彼もバスケ部でキャプテンを任されている。とても人気者だが意外と一途でとなりのクラスの星野さんにゾッコンなんや。



そんな時美彩男くんが「かずや!勇気だせって!」って励ましたらしくいつもよりもキリッとした顔でかずやの気持ちを聞いた。そして今のこの関係がある。




かずやは本当に草食系でデートや食事に誘うのにかなりの勇気が必要みたい。普通に話すのは大丈夫なのになー。いつも「俺がもっと男らしかったらよかったのにね。情けないよ。ごめんねなーちゃん」なーんて言うんやで?むしろそこに惹かれたというのにななは。どんな時もななの意見を尊重してくれるような優しい人なのに。よくまいやんからは「時には男子らしくガッと来てほしくない?」みたいなこと言うんやで?…まぁ、来てほしくないわけでもないのが本音やけど。





高山「なーちゃん!待たせてごめん!帰ろ!」


あれ、いつのまに試合終わってたんやろ。考え事してたからかな。部活終わりにバスケ部の試合をみれたのは美術部も役得やんなぁ。





高山「今日久しぶりにどっかよろうか?」


西野「んーんじゃななマックいきたい」


高山「おいいね俺お腹すいたわ」



肩を並べて二人で歩く帰り道はななの一番の楽しみ。かずやと話してると会話とぎれないし、何より沈黙が息苦しくない。



高山「今日さー美彩がさー。星野さんの前でかっこつけたじゃんかさー。星野さん見てなかったらしいよ(笑)」


西野「えぇ。それは可哀想やったなぁ美彩男くん(笑)」


高山「もう付き合ってるのに必死にかっこいいとこみせたいって頑張る美彩もさすがだわー。まぁ星野さんのおかげで最近プレーがよくなってるもんなぁ」


西野「んー男の子ってさやっぱり彼女とかの前でかっこつけたいもんなんかなぁ。かずやはどうなん?」


高山「えぇ!?俺!?俺はまぁかっこつけたい…かなぁ。だってかっこいいって思ってもらえたらうれしいじゃん?」


西野「ほほぉ。かずや今日決めとったね点。かっこよかったやん」


高山「えぇ!?本当?ありがとう!」


西野「でもあんな大勢の前で手ふったらダメやろ?バレちゃうやん」


高山「えぇ?だ、だって隠してるわけじゃないじゃん?…もしかしてあんまり公言したくない?」


西野「そういうことじゃなくてな。見せびらかすようなことはしたくないねん。恥ずかしいやん」


高山「そ、そうだよな。恥ずかしいよなごめんな」


西野「ダメ。かずや勘違いしとる。そんな謝らんといて。二人のときは…ええよ?…隠したいんじゃないからね。」


高山「うん!わかったよ!なーちゃんはマックいったら何食べるの?」

………


かずやとの会話も弾み、あっという間にマックに着く。かずやはバスケ部の中でも長身でメニューをみるためにななの目線までかがんでくれる。



高山「なーちゃんは席すわってていいよ。俺持ってくから」


西野「ええの?んじゃ座っとくな」


かずやにそういわれてちょこんっと席に座る。マックは学生やら子供やらで混んでいておしゃべりするには心地よい。




はいシェイクだよなーんて言っわたしてくれるかずやは4,5個ぐらいハンバーガーを自分の目の前においている。かずやはたくさんたべるんやなぁって思ったけどそりゃ部活終わりの高校二年がそんなに食べないわけないよなぁなんて思う。




かずやは美彩男くんほどではないけれど密かに女の子から人気がある。あんまり点を決めるポジションではないからやっぱり美彩男くんに負けてしまうところもあるけれど本当のバスケオタクはかずやの本当のうまさがわかるらしいんやな。たまにポジションを忘れて一人でゴール向かって決めちゃう時もある。かずやはギャップ萌えの使い手さんだと思う。試合中はキリッと真剣な顔をして点を決めるとへにゃって笑うなんて反則やで。




高山「ごちそうさまでした!」



あんなにあったハンバーガーをもう…。やっぱ男の子はすごいなぁ。




マックを出て薄暗い帰り道を歩く。明かりの乏しい街頭はその道の寂しさを物語っている。そんなときでもかずやとの会話は明るい。




西野「バイバイかずや。うちまでおくってくれてあんがと。」


高山「おぉ!まぁうちも走ればすぐだからさ。んじゃまた明日。」




チュッ




ほっぺたに柔らかい感触と真っ赤な顔。口じゃないところがまたかずやらしいなぁ。



西野「…ふふっ。口じゃないんやな(笑)」


高山「…っ!」



顔を真っ赤にして驚いた顔をするかずや。キスするためにわざわざかがんで一応かっこつけのためかポケットに手なんていれちゃって…。


西野「…ヘタレやんなぁ」


高山「へ…?」


その瞬間かずやの顔がこわばった。
…あかん。言ってしもうた。男子が一番傷つく言葉。かずやが一瞬悲しい顔をした。ちがうかずや。ちがうんや。



西野「ちがうっかずや…」


高山「…ばいばい七瀬。おやすみ」


あ、まってかずや。走っていかないで。そんな暗い声で七瀬なんて呼ばないでよ。でもななが悪いんや…。口じゃなくてほっぺにしてくれるかずやが好きだよって言えればよかった。なのにヘタレだなんて…。明日謝ろう。しっかり。でもかずや…ごめんかずや




【高山side】




「…ヘタレやんなぁ」




この言葉が頭から離れない。彼女に言われたくなかったこの言葉。まぁもとをたどれば俺が悪い。やっぱり男なら彼女をかっこよくエスコートしてガッとやってキュンってさせたいだろ。だし、こう…驚いた顔とかいろんな顔みたいじゃん。





あーくっそ。なんで彼女の前だとうまくいかないんだろ。一緒にいてすげー楽しいし飽きないし顔を見るたびに好きになってくのに。なんか彼女の前で何かしようと思っても体が思うようにいかない。




プルルルプルルル



んだよ…美彩男かよ。まぁ事情さえ話せばあとで大丈夫か。



プルルルプルルル…




んだぁもぉ!




高山「…んだよ」


衛藤「んだよってなんだよ。らしくねーなぁ。その声はまさかへこんでる?かずやなんかあったの?」


高山「…みさぁー!」


衛藤「おぉ!まぁ俺に話してみって」



………………





衛藤「あはははははっ!それは傑作だなお前(笑)西野さんもやりますねぇ」


高山「笑い事じゃねーよぉ!まじへこんでんだよ」



衛藤「でもそれはお前がわ「この電話きんぞ」


衛藤「まぁ怒んなって。でもなぁそれは男のプライドがな。傷つくわな。」


高山「うん。傷ついた。まじで。七瀬に言われたのがめっちゃ傷ついたわ」


衛藤「俺はさみなみのかわいい顔とか喜んでる顔がみたいからなんでもしてやりたいし。自慢の彼氏でいたいから最善を尽くしてるよ。前なんか少女マンガよんだからな(笑)お前は西野さんの顔みたくねーのかよ」



高山「みてーにきまってんだろーが。怒るぞおい(笑)でもヘタレって…ヘタレって」


衛藤「お前ささっきから自分の気持ちとかばっかだけど西野さんが待ってるっていう可能性考えないの?」


高山「…あ」


衛藤「はいギルティー。それはさダメだろ」


本当だ。俺自分が恥ずかしいとかかっこよくみせたいとか思ってたけど一番大切ね七瀬のことおろそかにしてた。ダメだ。俺。何へこんでんだよ。


衛藤「大切にしてーのはわかっけどお前そのままとか俺が承知しねーぞ?」


高山「ごめん美彩。俺見失ってたや。ありがと美彩。さすがだな」


衛藤「なめんなどんだけ片思いこじらせてきて今があると思ってんだ。俺のほうが先輩だそぉ!?(笑)」


高山「ふっ!そうだな(笑)」



…………



翌日




【西野side】





今日は昨日のことでかずやにしっから謝って説明してガストにいって奢る!ななが100%悪いんやから。彼氏を傷つけるなんて最低やから。だからこそしっかり謝る。





高山「美彩おはよー」



衛藤「おはよーかずや」



美彩男くんは昨日のこと知ってるのかなぁ。かずやの声はいつも通りに戻ってて少しだけ安心した。少しだけな。




お昼の時間。いつもかずやと美彩男くんと星野さんとななで食べる。今日に限って星野さんと美彩男くんは二人でたべるらしい。まぁおらんほうがなな的にほ都合がいい。



西野「かずや!一緒に食べよ」


高山「…うん!」



かずやの返事が喉から絞りだしたような声にかわった。平然を装った声。ななのこと嫌になっちゃったんかな。でもかずやなら謝ったら許してくれるはずや。だってななこのままなんて耐えられないもん。





西野「…今日は美彩男くんと星野さん二人でたべるんやね。」


高山「うん」



西野「あんなぁかずや…昨日のはな」



高山「あ、いやいいよ別に。」




別になんていつもいわへんのに。気を使ってるんやななに。気にしてるくせに。傷ついたくせに。ごめんなぁ…



西野「かずや!ななの話…聞いて」


高山「…ん?」


西野「昨日のはなちがうねん。言い訳に聞こえるかも知れないけど、ななはキスうれしかったの。口じゃなくてほっぺに優しくしてくれるかずやがもっと好きになったの。でもあんな言葉を言うてしまったことはななが悪かった。ごめんなさい」


高山「…!」


かずやはぐいっとななのうでをつかんで座ってるななを立たせた。そしたら上から包むようにななを抱き締めた。一連の流れすぎて…驚きすぎて…ドキドキして心がもたへん。



高山「俺のほうこそごめん。なーちゃんをそう思わせたのは俺の責任だし第一こういうのは俺が引っ張んなきゃいけないだろ。自分のことばっかで七瀬のこと考えてなかった」



西野「ちがうかずやはいつもななっ…ん」


ななの顎を上に上げてもう1つの手で体を上にあげてくちにキスしてきた。かずやはいつもよりかがんでなくて自分にななを引き寄せるかのような…。しかも今日は口に。やばいドキドキが止まらへん。




西野「かずやっ。急にキスするなんてびっくりだよ!なんかななな。今ドキドキ止まらんねん。こっちみんといて。」



高山「えみたい。」


かずやはななをひょいっと持ち上げこっちを向かせてくる。手で顔を隠しても優しく手をはがすかずや。



高山「…かわいい」



さっきまでの顔とうってかわってへにゃって笑うから。またななの心ドキドキするやん。



西野「…バカ」



高山「あ、ごめん!なーちゃんさっきうで引っ張ってごめんね」





こんなときも優しくなな思いなかずやでした。



かずやは成長するんやろ。これ以上成長されたらななの心臓がもたないかもしれへんね。





end
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