長編さんです

□集い
1ページ/1ページ








【平手side】





平手「そう。んじゃよろしくね。可愛い可愛い彼女さん」


そういって私たちはもう一度強く抱きしめあった。力強くハグしたあとは、美愉と付き合えた証に指切りをして、もう暗いからって美愉を家まで送った。



自分の部屋に戻って、我に帰る。パタンと音を響かせて閉まったドアは私に同情しているみたいだった。



鈴本「私は…平手のことすきなの。ずぅっーと前から…好き…だったの。だからどんな平手も受け止めたいって思ってるんだ。だから…」




鈴本「離れないよ。今まで通りずっと一緒にいる。だからお願い、平手の全部…みせて」




鈴本「ねぇ平手。私やっぱり…付き合いたい。私平手しか好きになれない気がするの。平手のこんな姿みても全然嫌いになんてなれない。」






平手「……はぁあぁ」




閉めたドアに背中を付けて力なく膝をおる。





幼い時にじいちゃんが言ってた。「ワシたちヴァンパイアは運命の人、もとい自分が一番美味いと思う血がピピーンって分かるのじゃ。だがそう簡単には会えない。だからワシとばーさんみたいに運命じゃなくてもお互い好きになって最期を迎えるヴァンパイアもいる。もし、お前が運命の人を見つけたらたくさん愛してやりなさい。そして一生涯守ってやりなさい。」って。




一目惚れだった。会った時から自分の本能が叫んでるんだ。こいつだこいつの血を飲めって。じいちゃんが言ってた通りピピーンってきた。血を吸いたい抱きしめたい。自分の物にしたい。あわよくば一生涯のパートナーに…。


自分の奥底から溢れ出すどす黒い感情。ふつふつと湧き上がるヴァンパイアの本能に洗脳されて少し、いやだいぶガッカリしたのをおぼえてる。




ずっと好きだった。一緒に小学校に上がったときも中学校に行った時も、高校受験も…。どんなときだって君がいた。だからこそこの関係を崩したくなかった。傷つけたくなかった。美愉の隣にいれないんならヴァンパイアの姿なんて一生さらしたくない。それだけ大切なんだ。なのに、君は自分からそのトビラを開けた。




平手「…受け止めるとか…ほんっと」


何回も何回も妄想したこの関係。一生築くことの出来ないものだと思ってた。嬉しいのを通り越して愛おしいを突き抜けて…。声をだして喜びたい。でもそれを通り越して息が零れるだけだった。





平手「…愛佳と理佐に会いに行こう。」





たくさん頭のなかでこの気持ちを処理して、やっと空っぽになったころ、私はふと冷静に思いついた。


鈴本「平手!今!私の記憶消そうとしたでしょ」




そうあまりにも美愉がヴァンパイアについて詳しすぎる。





平手「…あーもしもし?ぴっぴ?うん、私。理佐もいるー?」







♢ ♢ ♢




志田「よかったじゃん!おめでとう」


渡邉「今日はお祝いだね」


ぴっぴと理佐の家までは駅1つ分くらいだから走れば3分ほどでつく。同じヴァンパイア同士なかよーく近況とか出来事とか相談とか…。たくさんのことを話し合える人が居るってのは心強い。



平手「…でもさぴっぴ。能力についてたくさん話したでしょ?」


そういって私はぴっぴの頬をつまむ。


志田「そりゃね。私と理佐と仲良くしてるのにむしろ答えなさすぎるのもひどいかなーって。むしろもんちゃんが平手がヴァンパイアだってこと知らなくてビックリしたんだからね。」


渡邉「うん、私もビックリした。」


平手「だって…嫌われたくなかったんだもん」


志田「もんちゃんに?」


平手「そう。別に他の人にはバレたり嫌われたところで記憶消せばいいだけだし。」


渡邉「もんちゃんのは消せないの?」


平手「うん。なんかそういう手荒なマネはしたくない。」


志田「ぶふっ笑純愛かよ。…まぁ気持ちは分からなくはないけども。」


2人とも同じヴァンパイアとして2人にはパートナーがいる。



ぴっぴには守屋茜。理佐には小林由依がいる。

2人とも結構いろんなストーリーがあって今があるから今度きいて見ると面白いかもしれないね。正直、理佐は私よりも拗らせてると思う…笑。



平手「そういうぴっぴは茜にゾッコンなくせに。この前なんて倒れてたじゃんか笑」


志田「うっせ。」


渡邉「茜には連絡すんな。…今あいつ疲れてるから血は…吸えない。やめ…ろ…。って。あはははははは!」


理佐は顎に手をつけて最大限にカッコつけ、ぴっぴが言ったセリフのモノマネをしている。


志田「りっちゃん怒るよ。…だって仕方ないじゃん。守屋が好きなんだからいいでしょ」



このセリフはね。この前、んーっと3週間ぐらい前にぴっぴと理佐と私と美愉で駅前で遊んでいたら急にぴっぴが倒れちゃって。自分で立ち上がることもできないし、話すこともままならないぴっぴをみて、美愉は泣きそうだったのをおぼえてる。


ヴァンパイアは定期的にパートナーの血を吸わないと干からびちゃって元気もでないし、ましてや能力なんて一切使えなくなる。まぁだからこそのパートナーってのもあるんだけどね。でもたてなくなるってことはそうとうな日数を空けないと起きない不祥事だからなにかあったんだと思ってた。


その時は理佐にぴっぴを家まで運んでもらって、私たちは理佐に飛ばされて家まで送ってもらった。


渡邉「…こんなこと起こすなんて愛佳らしくない」


志田「…ごめっりっちゃん。…」


平手「いつから吸ってないの?」


私の質問に答えたくないのかぴっぴはうつむいた。そうしたら理佐が言えよ、と言わんばかりの顔でぴっぴを脅した。

志田「2ヶ月前…」


私はその場で思った。そりゃそーだ。だから倒れんだよ。でもまだ美愉がいるから本音は言えなかったのだ。


渡邉「ケンカでもしたの?…まぁまず茜に連絡しとくからね」


志田 「茜には連絡すんな。…今あいつ疲れてるから血は…吸えない。やめ…ろ…。」


鈴本「え…ごめん。もうしちゃってた」



んでそのあと茜がきてぴっぴと一緒に茜の家に帰ってった。なんかその時期は体育祭の準備期間みたいなやつではりきってた茜を疲れさせるわけにはいかないからって吸うのを控えていたらしい。次の日にぴっぴが今みたくいじられたことはいうまでもないでしょ?笑。


(こっから普通に会話に戻ります)

平手「ぴっぴってなんかどこかチャラいから理佐ほどパートナーへの愛が強くないのかなって思ってたけど、すごいね。羨ましい。」



志田「うるせーご新規野郎。」


渡邉「ご新規野郎笑。」


平手「でもほんっとに良かった。私、運命の人とパートナーになれたよ。」


志田「いや、こっちがどれどけ大変だったかわかってんのか。笑」


渡邉「もんちゃんずーっと平手のことしかみないんだもん。ほかは恋愛対象じゃないですよーみたいな笑」

志田「なのに当の貴様はおもっきりチキってるし笑。なにが傷つけたくなかったーだよ。…いやまぁわかるんだけどね。うん。」


ぴっぴは腕をくんで私に同情してくれているみたいだった。チキったという言葉は聞かなかったことにしよう。


平手「ありがとうぴっぴ。あ、ヤバい早く帰らないとお母さんが心配しちゃうわ」


志田「なぁに。すぐでしょーが笑」


渡邉「ばいばい。また来てね」



2人に軽く挨拶をして、家をでる。やっぱり楽しかったなぁ。また話したいなぁ。


今美愉はなにしてるんだろ。電話かけてみちゃったりしてもいいんだよね?




平手「もしもし…うん、私…今大丈夫?」






つづく


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ