長編さんです
□大好きな君へ
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【志田side】
本当に世話のかかるりっちゃんだね。まさか鬼化してぶっ倒れるとは…。小さい頃から君ってやつは誰かのことを考えては苦労してたじゃないか。こりないねーりっちゃん。
志田「お、ゆいぽん。はいってはいって」
はーいりっちゃーん。愛しのゆいぽんですよー。って、寝てるから分かんないか。
小林「…理佐は?」
志田「…ゆいぽん泣かないで。大丈夫だから」
ゆいぽんは冷静に理佐の様子を聞こうとするが目は涙目で声も震わせている。この事件は別にゆいぽんが悪い訳じゃなくて、今横で寝てるコイツが悪いから。笑
小林「…ほんとう?」
志田「うん。大丈夫。すぐ起きるよ。その時に一緒に居てあげてくれないかな?」
小林「……(コクッ)」
コクってうなずいてくれたゆいぽんを理佐の部屋に通し、寝ている理佐のベットの横にイスをおいて…。「うちの家、ゆいぽんの自由にしていいから」とどこかのドラマでみたセリフを吐き、にじたくをして守屋の家にむかう。
志田「んじゃゆいぽん。またね」
小林「え、愛佳は?ここにいなくていいの?」
志田「うん。その方がゆいぽんも言いたいこと言えるでしょ?あのバカなりっちゃんをどうにかしてやってください」
小林「…ありがとう愛佳」
志田「いえいえ。…今度クレープ食べたいなぁー」
小林「うふふ。はいはい」
んじゃーねりっちゃん。
私は起きたりっちゃんがゆいぽんに何をされるのか楽しみで少し口角があがったまま、自分の家を出た。
【渡邉side】
渡邉「大丈夫っ?」
ドサッと倒れた君をなぜだか放っておけなくて、疲れることが嫌いな私が3階から1階の保健室までだっこして運んだ。まぁ、そんなことじゃ疲れないんだけどね。
具合が悪そうに目も開けらんなそうな君は私の事なんておぼえてないだろうなーって。
あとから運んだ君が貧血で倒れて今は元気なことを聞いて知らない君に勝手に安堵して、あの時運んでよかったーなんて胸を撫で下ろして…。あとから友達から聞いた君の名前を何回も何回も口ずさんで。
小林「あのさ理佐…。私…理佐のこと好きみたいなの」
渡邉「………」
あぁ、なんて世界は残酷なんだろう。私の好きな人は由依で由依の好きな人は私。ここまで仲良くなったのに。お互い特別な感情を抱けたのに。でも私みたいなヴァンパイアは君の血を吸わないと生きていけないんだ。そのただでさえ少ない血を。…知ってるよ君が貧血気味なことぐらい。
君と付き合って他の誰かの血を吸って生きるなんてことも考えたけどそんな誰でもかしごも血を吸えばいいってもんじゃないと思うんだ。たしかに私は血を吸う量や頻度がまわりと比べたら全然少ない方だけどでも君の体にこの針の様な牙をさして痛がる君を横目に自分は美味しいものにありつけるなんて私には耐えきれなかったんだ――。
渡邉「…ん」
まっっぶ。
…なんだか変な夢を見ていた気がする。ん?誰だろ。誰かにそっと握られた右手が暖かくて、愛佳かな?とか思ってるけど少しの希望と期待を込めて名前を呼ぶ。
渡邉「…ゆ…い?」
小林「…はーい」
まだ開けにくい目を細めて私の手を握る主を探すと声がして、それは大好きな人の姿だった。
小林「理佐っ。よかっ…た」
ポタポタと君の顔から零れる。
そういって涙を零す君があまりにも綺麗で少し申し訳なく思う。自分のせいで泣かせているとは思っているんだけどすっごく綺麗で…。
渡邉「由依ごめん」
そういうと彼女は私の目をみて、すこし怒っていて呆れた表情で私に言い放った。
小林「…なんで嘘ついたの?」
【小林side】
てちからLINEがきてリビングでゴロゴロしていた体をすぐに起こす。
「理佐が倒れた。早く来て」
この文字をみただけで、自分が自分じゃなくなった。急いで着替えてお母さんに「友達が勉強を教えてって言ってるから教えてくるね遅くなります」ってLINEして…。わたしは愛佳の家まで走った。
愛佳に通された部屋のイスに座る。愛佳になんで鬼化したのって聞いたら「…血が理佐の中で足りてないんだよ」って言ってた。
どうして?定期的に会ってたし血もあげてた。「もういいの?」ってきくと「うん、美味しかった」って返ってきて…。その会話自体幸せだなって感じていたのに…
小林「私と会う度血は吸ってたけどホントの微量だけ吸ってたでしょ。」
渡邉「………」
すぐだまっちゃって下向くの癖になっちゃって…。
小林「…私が貧血気味だから?」
そういって理佐を追い込めると、さっき起きあげた上半身がビクっと震えて、下を向いていても気づくぐらい目を見開いた。
小林「理佐…。私悔しいよ。私はいつも理佐に会う度理佐の力になれてるって思ってた。なのに理佐に迷惑をかけてたなんて…。悔しいよ」
私の本心を私の本音で理佐に伝えた。私の言葉を紡ぎ出して、だんだん声がでなくなって…。
渡邉「由依…。私が由依のこと好きだからだよ。」
なんでそんなことしたのってきくと思った理佐は前のめりにそういってきた。
小林「…バカ。…んじゃあ…ん!」
渡邉「…へ?」
私はいつも理佐が吸う鎖骨の部分をさらした。
小林「ていうか私貧血治ったから。もう貧血とかじゃないから」
ほら…ん!って理佐に差し出して。理佐は興味ないって言いたげだけど今すぐにでも食いつきたいような目で私の鎖骨をみている。
渡邉「由依…。それ他の人にやっちゃだめだよ」
小林「理佐にだけだよ。だから…はい!」
渡邉「……っ!」
その発言を聞いた理佐は私の鎖骨を少し舐めてから牙をたてた。
渡邉「由依…つ、辛かったらいってね」
小林「うん。」
そういって理佐はおあずけを食らった犬のように私の血を飲んでいる。正直、牙で皮膚を破かれるときはすごく痛いが理佐が幸せそうに喉を鳴らし、抱きしめてくれていることが私にとって至福の時間だった。
私の血を飲んでいる時はちゅ…ちゅって少しいやらしい音が響く。余裕なさそうな理佐の顔に私だけが見られるという優越感に浸って余計感情がたかぶる。
渡邉「…っ。ちゅ…」
一生懸命血を吸う理佐がなんだか子どもっぽくって大型犬みたいで可愛くてすんごく愛おしい。
渡邉「…っはぁー。…由依大丈夫?」
小林「ん。…でもちょっと頭クラクラする…かも」
渡邉「…え…どうしよう」
小林「うふふ。…抱きしめたら治る」
渡邉「わ、わかった。はいっぎゅー」
小林「…もう…私の前で我慢しちゃだめだよ?」
渡邉「…うん。わかった約束する」
理佐。私も理佐のこと大好きだよ。でもね、大好きな理佐に我慢されるのってね。胸の奥がぎゅってなってチクチクして…。自分じゃどうしようも無くなっちゃうんだよ。だから、絶対もうしちゃだめだからね。これからたくさんいろんなところへでかけよう。2人でたくさん思い出作ろう。
理佐と久しぶりに分かり合えた気がした私は理佐の腕の中で目を閉じた。
♢ ♢ ♢
【平手side】
鈴本「りぃーさぁー!」
理佐は次の日ちゃんと学校に登校した。どうやら今日はゆいぽんと一緒に来たらしい。顔もツヤッツヤだし、声にも少しだけハリがでた気がする。
理佐は私にとっても美愉にとっても大切な存在なんだ。だから絶対に失いたくないし、困っていたら助けてあげたい。あの時こばに連絡しといてよかった。んで今美愉は理佐に抱きついているわけで…。うーむ、いい気分はしないですなぁ笑。
志田「理佐おはよう。気分は…大丈夫そうだね!ところで昨日は私がいなくて、ゆいぽんが家に泊まったそうだけどなにしたのぉ?笑」
渡邉「…なんもしてないよ。」
志田「へぇー笑。りっちゃん耐えたねぇ?この前平手と私とお泊まりしてたときなんて言ってたっけ?笑」
渡邉「ばっ。愛佳うるさい」
志田「理佐は意外とムッツリさんだからなぁ笑」
平手「うふふそれなーぴっぴ!あ、理佐顔あかくしてやーんの笑」
渡邉「う、うるさいなぁ。いいから黙っててよ。あの場だから言えたんだからさ。」
小林「ふーん。あの場だからねー。昨日の約束もう破っちゃうんだー。へー」
渡邉「いや、あのちがくて由依落ち着いて」
志田「理佐しどろもどろー笑。由依とあんな事やこんなこと…ってあはははは」
平手「いや、それはぴっぴのほうが可愛かったよ。ぴっぴは意外と奥手だもんねー笑」
志田「平手さんうるさーい」
小林「りさー。あとでその話たっぷり聞かせてもらうからね。」
渡邉「…い、いやだよ恥ずかしいもん。」
平手「理佐諦めな。こば怒ると怖いから」
志田「ま、りっちゃんのことだからバレるのは時間の問題っしょー。」
渡邉「そういう愛佳はまだ手出せないくせに…」
志田「あぁー!?りっちゃん今なんかいっ「…平手は?」
平手「…へ?」
鈴本「平手は…お泊まり会で誰の妄想したの?」
制服のジャケットの裾をぎゅっと握って、目までつぶっちゃって。たぶん何回も聞こうとしてタイミングのがしてやっと声をあげたんだろうーなー。
その私…だよね?みたいな顔ホントそそる。ちょっとツンデレのくせにこういうところではそういうこと言っちゃうんだもんなー。
志田「…やっば。もんちゃん今のちょー可愛いね。」
小林「やっばいぎゅってしたくなっちゃうね。」
志田「お、平手さん顔赤くないすか笑
あはははははは」
平手「ぴっぴうるさーいてかそんなことなーい」
志田「うるさいとかいっておきながらちゃんと照れてるんじゃないよ中坊。」
渡邉「いや、同い年だから笑」
志田「りっちゃん今日もキレキレだねツッコミ」
キーンコーンカーンコーン
小林「あ、予鈴だ」
志田「んじゃね2人とも。じゃーな平手笑」
平手「うるっさいぴっぴ。」
さすがに答えないのは悪いかなって思って勇気を出した美愉の頭を撫でて、ほほ笑みかける。
平手「ちゃんとあとで教えるからね。今日一緒に帰ろっか」
鈴本「…うんっ!」
んじゃまたその話は帰りにでも?笑
つづく