貴方とやり直す

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少年探偵団達に対して考えを改めたレギュラスのお陰で以前の様な生活に戻った。
まあ誘ってくれる少年探偵団に毎回付き合うことなく、稀に付き合う程度というのがある意味以前と変わらないというか…。
と、いつもどおり何気ない学校生活を過ごしている。


小学校から帰ってき、レギュラスが箒に乗るためにラフな服に着替えるのをリビングで読書をしているローアルの隣に座り紅茶を飲んで待っていると来客を知らせる音が鳴った。

「おや、配達かね?」
「うーん…そうかも?」

首を傾げるローアルに自分が見てくると立ち上がったが、私が見てくるよ、と栞を挟み本を置いたローアルは自分の頭を撫でてからリビングをそそくさと出ていってしまった。
別に配達員はいつも決まった人だし、ローアルの信頼を置いている人だから自分が出ても良かったのだが。
素直に甘えておこう、とソファーに座り紅茶を飲んで待っているとリビングの扉が開きてローアルが入ってきた。

「お祖母様ありが――」
「やっほ!リュナちゃん元気?」
「お邪魔します」

笑みを浮かべるローアルの後ろから顔を覗かして挨拶してきたのは笑顔を浮かべている園子と蘭だった。
二人の姿に呆気に取られたようにポカンとしてローアルを見れば園子と蘭にソファーに座るよう促してから面白げに笑みを浮かべて自分を見る。

「どうやら来客はソノコとそのお友達だそうだ。リュナとレギュラスに話があるそうだよ」
「え…?」

そう言ってキッチンの方に姿を消していったローアルから対面のソファーに座った園子と蘭に小首を傾げる。
話とは一体なんだろうか、と思いつつ口を開こうとした時にリビングの扉が開いた。

「リュナおまたせ……何でいるのですか」

準備が出来たレギュラスが迎えに来てくれたのだが蘭と園子の姿に思わず素が出てしまったのだろう。
幸い英語だったので気づかれることはなかったが我に返って、小さく咳払いをしてから入ってきたレギュラスの姿に蘭と園子は珍しいと言ったげに目を瞬かせる。

「買ってる所は見てたけど、ちゃんとラフな格好もするのね…」
「いつもそんな格好しないから珍しいね」
「僕も楽な格好する時もありますよ」

箒に乗る時や運動する時は軽装するから別に珍しいとは思わないが、蘭達からすれば随分珍しいらしい。
深く追求される事は無く、へぇ…と感心するようにする園子と蘭に特に気にすることなく自分の隣に座ったレギュラスは少し怪訝に眉を潜めて英語で自分に話しかける。

「郵便物だと思っていたのですが…何故彼女らが?」
「私もそう思ってたよ。なんでも私とレギュラスに話があるんだって」
「話?」

心当たりがない、と小首を傾げる彼に自分もそうだと同意するように頷いて、頑張って自分達の英語を理解しようと耳を立てている二人の姿に首を傾げて口を開く。

「突然どうしました?二人だけで尋ねてくるのは珍しいですね?」

事前に誘われ迎えに来てくれることはあったが、こうして二人が尋ねてくるのは初めてだ。
もしかして少年探偵団に対して冷たく接していたから咎めに来たのだろうか、と少し身構えつつ尋ねると蘭は眉を下げて見つめてくる。

「子供達…えっと歩美ちゃん達が二人が元気なさそうって言っていてね?」
「眼鏡のガキンチョもなんだか落ち込んでたみたいで、聞いてもあんまり言いたくなさそうだしこうして二人の様子を見に来たってわけ!…って言っても最近仲直りしたみたいね?」
「仲直りも何も…喧嘩はしてませんけど?」

どうやら自分達が避けていた状況を元気が無いと少年探偵団は捉えていたようだ。
コナンだけに誤解しないでほしいと伝えたのだが、案外伝えなくても嫌悪に思われなかったのかも知れない。
平然と答えるレギュラスに蘭と園子はそうなの?と不思議そうに顔を見合わせて首を傾げる。
あからさまに避けていたし、多分少年探偵団に気を使わせてしまったのかも知れない。
喧嘩ではないと知ってかホッと安堵の息をついた蘭は笑みを浮かべる。

「二人と話したかったんだけど元々コナン君達と一緒に登校してないし、中々会えなかったから二人が元気じゃないって聞いてちょっと心配だったの。ほら、あのツインタワービルの帰りに二人共さっさと帰っちゃったきりだったから…」
「そうそう。まさかリュナちゃんをお姫様だっこなんかしちゃって帰っちゃうんだもん。もう、羨ましい…じゃなかった余程の事だと思ったのよ!?」
「園子本音が出ちゃってる…」

ジトッとレギュラスを見ながら告げる園子に蘭は苦笑を零す。
そういえばあの時自分の事で一杯一杯だったから気づいてなかったが、皆の前で横抱きにされたんだっけ…。
急に思い出して顔が熱くなるのを感じながら慌てて口を開く。

「あ、あの時は、私がもうダウンしちゃったから…。ご、ごめんねレギュラス…重たかったでしょ…」
「いえ、別にリュナを運ぶくらい楽ですが…」

細いと言いますが鍛えてますし?と笑みを浮かべるレギュラスに目を瞬かせる。
どこか捻くれたように告げる彼に、あ、と思い出す。
そういえばレギュラスに細いって言ったことあった、と思い出した。
いや、でもあれは細いけどちゃんと筋肉があることはわかっているし…ま、まあどちらかといえば華奢に見えるからそう言っただけであって、決して貧弱に見えるとは言っていない。

「はあ…女子が喜びそうな理想的な男子が幼馴染で良いわね…。私もイケメンな幼馴染が欲しかったわ…あいつは蘭の旦那だし要らないけど…」
「そ、園子…!何言ってんの!それに今は京極さんが居るでしょ!」

自分がレギュラスに誤解を解くために呟くように小さく英語で、細いと思うけどしっかりとした男の子の体つきだから!と顔が熱くなりつつも言っている間、園子と蘭の方も何やら話していたようだ。
蘭が恥ずかしそうに園子を叱っている。
多分また新一関係の事を園子に言われたのだろうと、自分の弁解を聞いて面白げに笑みを浮かべて頭を撫でてきたレギュラスは少し考えるような仕草をしてから蘭と園子を見る。

「あの時は想定外の事ばかりでしたし、それが尾を引いていただけです。…図太い彼らとは違ってリュナは繊細なんですよ」
「そ、そんな事ないってば…」

繊細なんて言われるほどメンタルは弱くない。
それこそあの時は予想外の事ばかりと前世の記憶の事を考えすぎたから思い詰めてしまっただけ。普段はもう少し落ち着いている…はず。
園子と蘭はレギュラスの言葉に苦笑を浮かべるが、納得するように頷く。

「ま、まあ…あんな事があったら普通なら塞ぎ込むわよね…」
「そうだよね…。子供達しかいない状況だったものね…。でも二人とも元気そうで良かった」
「二人を心配して来てくれたのかい。随分気にかけてくれてるみたいですまないねぇ」

追加分として園子と蘭、そしてレギュラスの分の紅茶をトレイに乗せて持ってきたローアルはそれぞれテーブルに紅茶を置き、空いていた自分の隣に腰掛けた。
園子と蘭はお礼を告げて、そんな二人に緩やかな笑みを浮かべるローアルは園子に視線を向ける。

「そういえばソノコと会うのは久しぶりだね。両親も変わらずかい?」
「ええ!二人共心配しなくてもいいぐらい元気よ!御婆様も元気そうで良かった!顔を見れなかったから体調でも崩したのかと思ったわ…」
「ふふ、心配してくれてありがとうね。中々顔が出せなくてな?でもリュナとレギュラスからソノコから誘ってくれているとは聞いていたから安心して託せたんだ。世話をかけさせてすまなかったね」
「世話だなんて!?二人共すっごく大人しいし、子供のくせに偉いのよ!?寧ろ私が世話されている気がするわ!」

大袈裟な程に反応を示す園子の様子をローアルの面白げに笑みを浮かべて見ている。
そりゃ、精神が子供じゃないし同年代ぐらいの園子に世話されるだなんてちょっとプライドが傷ついちゃうかも…。レギュラスなんかプライドが許さないだろう。
彼を見れば、何当たり前の事言ってるんだと言わんばかりに呆れたように園子を見ている。
ローアルと園子の様子を見る限り結構仲が良さげそうだ。
交流があるとは聞いていたが、多分園子の人柄からしてローアルとよく話していたのだろう。
相変わらず面白い事をいうねぇ、と呑気に笑うローアルに冗談じゃないと首を振る園子の様子はローアルが面白げに弄っているように見えて仕方ない。
自分とレギュラスの正体を知るローアルだからこその対応だろうが…。
御婆様も相変わらずだわ…と溜め息をつく園子から蘭に視線を向けローアルは首を傾げる。

「ソノコとはお友達のようだね?お嬢さんのお名前は?」
「あ、えっと毛利蘭といいます!」
「ほう!なるほど…お主がシンイチの…」

意味深で言葉を止めるローアルに蘭は顔を赤くさせて慌ててローアルと園子に忙しく視線を動かしている。

「あ、あの!私は新一の幼馴染みってだけで…!」
「おやおや、そんな深い意味で言ったわけじゃなかったのだが…これは脈アリと言った所か」
「そ、そんなんじゃないです!」

顔を赤くさせて誤魔化そうと早口で言葉を告げる蘭の様子は普通の幼馴染みでは収まりきれないと見てわかる。
こんなにわかりやすいってのに何で新一は気づいてないだろうか、と疑問に思いつつニヒルに笑みを浮かべていたローアルは緩やかな笑みに変えて蘭に、1度落ち着きなさいと宥める。

「そう謙虚することない。別に言いふらさないさ。リュナとレギュラスもそうだろう?」
「うん。言いふらした所で良いことないものね?」
「まあ…そもそも本人がいませんしね」

レギュラスに同意するように頷く。
今は事件で帰ってきてない新一が居ない所で言いふらしたとて関係が進展することは無いだろう。寧ろ逆効果な気がする。
そ、そう?と呆気に取られたように目を点にさせる蘭は落ち着いたようだ。
蘭の片思いに気づいたローアルはふむ、と1度目を伏せてからにこやかに笑みを浮かべて蘭を見る。

「しかし、ソノコとシンイチが幼馴染とは知らなかった。あやつから聞く話はいつもお主の事だったからねぇ?」
「ほほう?私を差し置いて蘭のことばかりねぇ…?」

どこか誂うように告げるローアルと良いこと聞いたと言わんばかりに悪い笑みを浮かべる園子に蘭は恥ずかしそうに、止めてよと困ったように笑っている。
青春真っ最中の彼女らにとっては一番楽しい時期でもあろう。…想い人がなかなか帰ってこないというのは可哀想だが…。



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