BOOK

□Fragrant flower
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「も…っ、もうっヒロちゃんっ!
結局ずっと膝の上だったじゃないっ!」

「いいだろ、まだヒート明けたトコだし
アイツらも分かってるって。」

「でっでも…っ」

「…これから何度ヒートが来る度世話に
なると思ってる? 今の内に慣れとけ。」

「っ…」

「だろう?…まぁ、番になって定期的な
性交渉を持ってればヒートも落ち着いて
来るらしいし、花純の場合は結構早目に
落ち着くかもな。」

「ひっ、ヒロちゃんのエッチ!」

「んなもん、お前のヒート待って何年だと
思ってんだ。卒業と同時に子作りだろ、
どう考えても。…まぁ、お前が社会に出て
暫く働くってんならその辺はまた応相談
だけど。――でも番と入籍は…そうそう
待てないぞ?」

「そ、そんなの…っ、私だって待てない
もん。…そんなの、ヒロちゃんだけじゃ
ないんだからね?」

「…っ、だからお前は…っ……あーもうッ
このまま子作りしちまおうか?」

「へっ?! 」

「…ってのは冗談としても、お前処女
だったんだからヒートじゃなきゃきっと
慣らさないとキツいぞ。…ヒート明けから
慣らしとくってのはどうだ?」

「……ホント、ヒロちゃんのエッチ…。」

「…男だから当たり前だろ。」


膝の上で、キス・キス・キス。
まさか自分がこんな風にヒロちゃんと
過ごすなんて。

普段から企業に鉢植えとかの配達もしてる
ヒロちゃんのがっしりとした腕の中は
温かくて私なんかスッポリと入っちゃう。

この腕の中がこんなにも居心地良いなんて
知ってたけど知らなかった。
もしかしたら小さな頃から私は知ってたの
かもしれない。ヒロちゃんとこうなる事。

だからずっと、ヒロちゃんがお姉ちゃんの
ものだと思った時から…ずっと何処かで
この腕の中が恋しくて恋しくて…でも
それは夢見ちゃいけないと思ってて…。

お姉ちゃん、ごめんね。
本当は私、ずっと羨ましかった。
ヒロちゃんの番のお姉ちゃんが…本当は
ずっと妬ましかった。
お姉ちゃんが大好きだったから表立っては
『一途な人と番になれて羨ましい』なんて
ボカして言ってたけど本当はヒロちゃんに
想われてるお姉ちゃんが羨ましくて仕方
なかった。

ごめん、ごめんね。
お姉ちゃん、ヒロちゃんを頂戴。
何よりも誰よりも大切にするから。

ヒロちゃんが好きなの。
男の人として、私のαとして…唯一の人
なの。だから許して。
お姉ちゃんが私にヒロちゃんとの事、
手紙に書くまで殆ど何も話さなかった理由、
きっと…お姉ちゃんもヒロちゃんを好き
だった。…時折見た、ヒロちゃんの背中を
目で追うお姉ちゃんの横顔を思い出す。
切ないくらいに真っ直ぐの視線。

胸が痛む。
…でも、私も好きだから。


好き

…好き。


「…花純? …お前、やっぱりまだ
ヒート明けて無いんじゃ…」

「……え?」

「イイ匂い、してる。
…お前のフェロモン…。」

「……ヒロちゃん……」

「――試して、イイか…?」

「……なにを…?」

「番に、なれるか。」


――それって…



「お前の奥で…射精しながら、
噛んでイイ?」


息の当たる距離で囁かれたそんな言葉。
ヒロちゃんの掌も熱くて…ドキドキする…

もう、心臓破裂しちゃうんじゃないかって
くらい。クラクラするような酩酊感。

これはヒート?
それとも、恋からくるもの?

私はコクンと頷き、チョーカーの鍵を
ヒロちゃんに手渡した。


「――ありがとう。」


そう耳元で低く囁いて、ヒロちゃんが
私にキスをしながらチョーカーを外す。

私の全てを触って舐めて…ヒロちゃんは
繋がりながら、…奥深くまで繋がりながら
首の後ろを強く噛んだ。

ピリッとした痛みと共に物凄い絶頂が
襲って来て、私は声も無く泣き叫びながら
気を失った。奥の奥で…ヒロちゃんの
大きなモノがビクビクと痙攣するように
震えてたのは…私自身が痙攣していたの
だろうか。

私たちは結局その日も日夜繋がって過ごし
折角その夜持ち寄りパーティをしようと
してくれてた莉子ちゃん達は門前で呆れて
帰っちゃったらしい…。

結果としては、番は発動してなかったの
だけれど、私の首には生々しい噛み痕が
数日クッキリと残り…結局周りには番が
出来たと知らせる事になってしまった。

…でも、番は発動してないから…私の
Ωフェロモンはまだ他のαの人達に影響し
私は改めてお姉ちゃんの経験した苦労を
ほんの少しだけど知る事となった。

…もちろん、大事に至る前にお姉ちゃんの
ガーディアン・チョーカーとヒロちゃんを
始め、莉子ちゃん達が全て手を打ってくれ
回避出来たのだけれど。



私のΩフェロモンはヒロちゃんだけのもの。
たった一人の私のα。


どんなにこの匂いが引き付けても、
もう私には貴方だけ。


2回目のヒートが来た時、そろそろかと
待ち構えてたヒロちゃんに早々に攫われて
私はその日、朝からベッドに引き込まれた。

もう一緒のベッドで寝起きしてたから
それは毎朝の事だったのだけれど…
その朝は、匂いが違うとスグに気付いた
ヒロちゃんが速攻で狼になって…。



たった一人だけの為の匂い。
本当にそうなって。

でも、そうなった途端、私の匂いはヒート
でなくても毎日、ヒロちゃんを誘惑してる。

ヒロちゃん曰く、私がヒロちゃんを大好き
だと思う度にふわん…と香って来るらしい。

周りにΩの知人もおらず、他を知らない
私だから、よく分かんないけど…それは
魂の番だから?



貴方だけの香り
貴方だけを誘う匂い


私は、貴方だけの為に咲く花。


ずっと
ずっと


貴方だけ。



好き

大好き

愛してる


ずっとずっと貴方だけの為に咲き続ける
貴方だけの花で居させてね。






end.

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