一往深情
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ソーマの話を聞かなければ、と決意したはずの日から更に数日。
未だ話ができないでいる。
その間ユイはシオのおもりに精を出していた。
なんでも吸収していく彼女に教え込むのが楽しく、研究室に入りびたる日が続く。
リーダーに回される任務も多いため、ソーマと一緒に任務に行くこともなかった。
『だめだだめだ……。
このままだとどんどん聞きにくくなってしまう……。』
「あ、ユイさん。」
『ヒバリさん……。
私宛の任務出てますか……?』
「例によって、サカキ博士がお呼びですよ!」
『あー……またかあ。
わかりました、行ってきます。』
「はい、いってらっしゃい。」
ぐるぐるとした頭でヒバリのもとへ行くと、博士からの呼び出しを伝えられる。
今度はなんだろうか。
シオ絡みなのは間違いないだろう。
博士のところへ行こう。
*****
インターホンを押し、こんこんここんとリズムをつけて扉を叩く。
『博士―。木下ユイ、参上しましたー。』
《いつもすまないね。入っておいで。》
『失礼しまーす。』
開かれた扉に身体を滑り込ませ、すぐに鍵を閉める。
シオが奥の部屋から出てきているのが見えたからだ。
めったに人が来ない場所とはいえ、廊下から中が見えるのはまずい。
扉に鍵をかけて振り向くと、見知ったコートが視界に入った。
『あ、ソーマさん……。』
「俺も今来たところだ。」
『あ、そ、そうなんですね……。』
気まずい。とても気まずい。
目を合わせることが出来ない。
話を、しなければいけないのに。
何て切り出そうかと悩んでいると、博士が現れた。
いいタイミングというか、なんというか。
「やあ。頑張っているようだね。」
『はあ、どうも……?』
「君のお陰でシオの知識、知能はほぼ成人のそれと言って良いほどに成長したよ。」
「したよー。ありがとね、ありがと。」
『それはなによりです。
シオも、頑張ったね。』
「えへへ。えらいか?」
『うん、すっごくえらい。』
にこにことお礼を言うシオに、少しばかり癒される。
空気も、少し軽くなったような気がする。
相変わらずソーマとユイの間に漂う空気はぎすぎすとしているけれど。
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