10/30の日記

18:13
百合花学園〜瑠花の場合 3〜
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瑠花と環は、お互いの都合が合う日は一緒に食事をする様になった。
その度に注目を浴びるのだが、最初程には視線は気にならない。

週に二回、食事出来たら多い方だし、昼休みという限られた時間なので、お互いの近況を報告し合う程度なのだが、何度か過ごすうちに、だんだんと欲が出てくる。

瑠花は環が可愛くて仕方なかった。
可愛らしい女の子はそこら中にいるが、環はちょっと違う存在。
娘…はナイので、妹みたいな存在だと思っていたのだが、最後に会った時、無意識に環の髪に触れてしまったのだ。
「糸くずがついてた」と、慌てて誤魔化したものの、瑠花自身の気持ちにはもう誤魔化しが効かない。

あの、柔らかな感触が右手から消えない。
自分を見上げてくる大きくて綺麗な瞳が、ずっと頭から離れない。


「そりゃ恋だね」

頭を抱える瑠花に、いつの間にか座っていた神代先輩が呟く様に一言。

「なっ……なぜ、」
「心の声、だだ漏れだよ。瑠花ってそんなに分かりやすかった?」
「……だから、こういうの慣れてないっていうか、」
「ちゃんと恋に発展したじゃない。しっかり捕まえるんだよ」

ニヤニヤと笑う先輩から逃げる様に、生徒会室を飛び出す。
もともと、今日は急ぎの書類もないし放課後に残っている必要はない。
いつもは、神代先輩のちょっかい位、適当にあしらっているのだが、今回はそうもいかなかった。
…純粋に、照れ臭い。
先輩の言っていた通りの展開になっている事にもちょっと腹が立つ。

今日は昼休みも会えなかった。
無性に環の顔を見たくなったが、もう友人と一緒に帰っているだろう。
一年生の教室へ向かう階段の上で、ふと立ち止まった時。
後ろから近付いてきた足音に続き、「先輩」と声を掛けられた。




結局、立ち止まった階段を降り、その先の渡り廊下まで行くことになった瑠花は、その用事が済んだ後、無意識にある場所に向かっていた。

もともと静かなこの場所だが、いつも以上に自分の足音が耳に響く。
石畳を歩く音は好きなのだが、今日はなんとなく寂しく感じる。
修理が終わっている石畳と、フェンスの確認なんて、今する必要はないのに、と、瑠花は苦笑いした。
折角なので、新しく立てた道標も見て帰ろうと、また歩き始めた。

そして辿り着いた道標の場所には。

「…環?」

道標の隣で、膝を抱き小さくなっている女の子が。
瑠花の声に反応してか、ふわふわの髪を揺らしながら、ガバッと顔を上げた。

「…瑠花センパイ!」
「どうしたの?こんな時間に…」
「あ、えっと…違う場所目指してたんですけど、なんでかココに…」

いつもの様に道に迷ったのだろうか。
とりあえず校舎内に戻れる様に立てた道標は、役に立たなかったという事か。

「道標、分からなかった?」
「…いいえ!もうすでに何度かこれに救われましたし」
「あ、そうなの」
「今は…なんとなくここに居たくなって…センパイは?」
「え?ああ、修理の確認に…」

忙しいですねぇ…と、環は納得したようだ。
今日はもう会えないと諦めていたので、瑠花は嬉しかった。
まあ、環からすると目的地に着かず困っていたのかもしれないが。

「どこに行くつもりだったの?」

そう尋ねながら手を伸ばすと、環はそれに応じ、ゆっくりと瑠花の手を握った。

「生徒会室…」
「えっ…そうだったの?ひょっとして私に会いに?」

環はコクリと頷いた。

「ごめん、着いたとしても不在だったかも」
「…今、ちゃんと辿り着いた」
「あ…ふふ、そうだね」

環が立ち上がっても、まだ握ったままの手を引き、帰ろうと促す。
背を向け歩き出そうとした時、環が手を引っ張ったので、右足がその場でカツッと音を立てた。

「…おっと、」
「瑠花センパイ、告白されたでしょう?」
「え?」
「同じ一年生の子が、放課後、瑠花センパイに告白するって言ってるの聞こえて、どうしようかと…いや、どうしようもないんだけど、その、」
「……」
「……嫌で」

環のむくれ顔をこの場所で見たのは二度目だ。
確かに、瑠花は階段の上で声を掛けられた後、渡り廊下で告白を受けた。
「好きです」と。
これが初めてではなく、これまでも受けた告白は丁寧に断り続けてきた。
中には身体目的の同級生もいるし、沢山の相手の内の一人にしてあげると言ってくる先輩もいる。
今日は、まだ素直な感じの女の子だった。

「あの子、一年生の中でも人気の女の子で…私みたいにひねくれてないし、」
「環だって別にひねくれてないよ」
「フェンスだって壊すし」
「まあ…それはまあ、」
「いつも迷惑ばかりで…」

これは喜んで良いのだろうか。
環のこの様子からすると、他の女の子に取られるかもしれないという…ヤキモチ?
だとしたら、瑠花にとっては嬉しい状況なのである。

微かに震えている環の手を引っ張り抱き寄せて、額、頬、唇にキスをしたい。
柔らかい髪に顔を埋め、首筋に吸い付きたい――。

手に力を込め、環を引き寄せようとした瞬間。
それよりも早く、突然抱き付いてきた環は、その勢いのまま、瑠花の唇に自分の唇を重ねた。

「ん……!?」

突然の出来事で、瑠花は環からキスをされている事を理解するのに数秒かかった。
首に両腕を回し、少し背伸びをしているだろう環の身体は、震えていて。
重なった柔らかい唇から、遠慮がちに熱い舌が出され触れてくるのを感じる。
格好良い人になりたいと言った彼女は、ただ待つのが嫌だったのかもしれない。

可愛い。愛おしい。
環が、自分を欲している。
そう考えると、瑠花もじっと待ってはいられない。

瑠花は環の腰をぎゅっと抱くと、触れてきた舌を自分の中に誘い入れた。
抱いた身体が、ビクリと跳ねる。
夢中になって、環の舌を追いかける。
くちゅくちゅ、ぴちゃぴちゃという音が、彼女の頭の中にも響いているだろう。
夕方のひんやりした風が足元を抜けて行ったが、身体は熱く、クラクラする程。

「ん…ふぅっ…んん…っ」

腰を抱く瑠花の腕に、ずしりと重みを感じた。

「は、はぁ…あ、も…もぅ……」

やり過ぎた…と気付いた時には、環の身体はふにゃりと溶けたように、瑠花の身体にぶら下がっていた。






つづく!

今回はちゃんとイチャイチャ書きたい…。

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