□無垢
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実弥は、左手を名無しさんの顔の横に付いて、右手で髪を梳かすように撫でている。



「名無しさん、俺が怖いか?」



「…ううん、実弥だから、大丈夫。」



ニッコリと笑んだ名無しさんは、これから自分の身に起こる事をまだよく分かっていない様子だった。実弥は、それに気付いていた。だから、少しでも怖くないようにと、心までふやかせるよう、口付けをたくさんした。



実弥は、顔を近付けると、名無しさんの桃色の唇に自身の唇を合わせた。



チュッ、チュッ、と触れるだけの口付け。実弥が作り出す可愛い音が、二人の耳に届く。名無しさんは、せがむように唇を突き出して、潤んだ瞳で実弥を見上げた。



「ん…、……ぅ」



僅かにだが開いた名無しさんの唇の隙間を、実弥は見逃さなかった。すかさず舌を伸ばして口内に侵入する。名無しさんはびっくりして目を開けたが、実弥の優しい瞳と目が合って、安心してまた閉じた。



「ふ……ぅ、は」



実弥の舌が名無しさんの舌を捕まえると、螺旋を描くようにぐるぐると回して、ザラザラとした舌の感触をお互いに感じ合った。



名無しさんは実弥を追い掛けるように必死に舌を動かして、実弥の舌を丸め込んだり吸ったりした。



次第に名無しさんの口内には唾液が溜まっていき、二人の舌が動く度に、クチュ、クチュ、と水っぽい音が辺りに響く。







ーーーー気持ちいい…、………実弥が、与えてくれている…。ー



名無しさんは、余裕も何も無いはずなのに、そう、確かに思えた。








二人の深い口付けは、長かった。名無しさんの口の端から唾液が溢れようと、そのまま続けた。実弥は、名無しさんの緊張を溶かそうと、わざと唇を合わせたままでいた。本当は、余裕は無いのに。







ぷはっ





唇を離した時には、酸素が足りなくて二人共息が荒かった。実弥はそのまま
名無しさんの首元に移動し、首筋に吸い付いた。



「んっ…」



小さな痛みが走って、名無しさんは声を漏らした。



「…実弥、何…したの?」



顔を上げた実弥は、名無しさんの首筋に付けた赤い華を満足そうに指で撫でた。



「俺の名無しさんだって印だ。誰にも渡さねェ。」



内に秘めていた、実弥の独占欲が姿を現した。



「…唇の痕、付けたの?私も付けるっ…!」



名無しさんは実弥の身体を押して、身を起こした。実弥は、名無しさんに跨ったまま、太ももの上に座った。



そして、名無しさんは、実弥の首筋に唇を近付ける。肌に吸い付いた。



しかし、痕は付かない…。



「…実弥、これ、どうやって付けるの?」



下から実弥を見上げる名無しさんを、何とも愛おしそうに見つめる実弥。フッと笑みを漏らす。



「もっと強くだァ、もっと強く吸い上げろ。噛み付いてもいいぜェ。」



ん、と首を傾けて首筋を曝す実弥。名無しさんの愛が、嬉しかった。



実弥に言われた通りに、歯を立てて優しく噛み付いてみる名無しさん。歯型が付いた。それを見て嬉しくなった名無しさんは、今度は下に場所を変えて、実弥の肌をキツく吸い上げた。



「、……」



顔を上げた名無しさんの前には、実弥の肌にしっかりと咲いた赤い愛の華。



「実弥!付いたっ!えへへ…」



嬉しくてその二箇所を指で撫でる名無しさんは、もう一度引き寄せられて、華をペロペロと舐めた。



「実弥、おいしい…」



無意識に違いない。もう華など関わらず大好きな実弥の肌を味わうように、舌先で上下に舐めたり鎖骨をなぞったりしている。笑顔で自分の首筋を舐める名無しさんに、我慢の糸が切れた実弥。



名無しさんの背中に腕を回して再び寝かせた実弥は、すかさず名無しさんの首元に顔を埋めて、たくさんの華を咲かせ、もう誰が見ても恥ずかしくなるような名無しさんの姿になった。



実弥は身体を起こすと、名無しさんと目を合わせる。



「浴衣、脱がすぞ。」



「う、ん…」



どこか歯切れの悪い名無しさん。大好きな人に、何も纏っていない素肌を見られるのは、恥ずかしくて堪らない。名無しさんは自分に自信が無かった。



実弥は、腰紐を解き、浴衣の襟に手を掛けた。ゆっくりと両側に開いていくと、桃色の乳首を持つ形のいい乳房が見えた。



すかさず名無しさんは手で隠したが、あっけなく実弥に外された。





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