□あなたに
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名無しさんは、自らもっと脚を開いて、全身の力を抜いた。もう、完全に実弥にゆだねると、決めていたから。名無しさんも、頑張っていた。



先っぽだけが挿ったところで、実弥は顔を上げた。



「名無しさん、大丈夫か、」



「ん、、だぃ、じょぶっ」



何にも無いわけない、完全に大丈夫かと言えばそれは嘘になる。けれど、二人共、諦めなかった。そこに、確かな愛があったから。



実弥は、身体を折り曲げ、名無しさんの唇に唇を合わせて深い口付けをし始めた。名無しさんの意識が口付けに持っていかれている間に、腰をグッと押し進めていた。



一番難関なのが、カリの部分。先さえ挿いってしまえば、後は二人の"大丈夫"が、本当に大丈夫になる可能性が高い。



「んん…ッ!ぅ、」



名無しさんは、指とは全然違うその大きな実弥自身に、痛そうに顔を歪めていた。しかし、身体に力は入っていない。実弥を、受け入れたかったから。口付けをしながら、薄らと目を開けて見ると、実弥も眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をしていた。



名無しさんは、右手を動かして実弥の後頭部に触れた。目を開いた実弥に、名無しさんは、柔らかな微笑みを見せた。



"もっときて…大丈夫だよ、実弥。"



実弥には、そう聞こえた気がした。名無しさんも、実弥にそう伝えたくて、後頭部を撫でた。



視線が交差している間に、実弥は、グッと力を入れて腰を進めた。擬音語を使うなら、メリメリと音がするだろう、名無しさんの内壁を、開いていく。中へと侵入していく。



名無しさんは、表情を一瞬苦しそうなものに変えたが、すぐにまた、微笑みを浮かべた。呼吸は一生懸命しているが、相変わらず手では実弥の後頭部を撫でている。



「ッ、はぁ、はぁ、ハア…」










挿いった。根元まで、全部挿いった。










「名無しさん、全部、全部だ、挿いったぞォ。」



「実弥……」








"ありがとう、やめないでいてくれて。"







名無しさんは、実弥の目を見上げながら、そう、たったそれだけ、呟いて笑った。



痛いはずだ。苦しいはずだ。しかし、名無しさんは、ここに来るまでに、"いやだ"とか"やめて"とか"まって"とか、一言も口にしなかった。実弥は、一回でも言われたらやめようと思っていたのに、名無しさんは、それどころか"ありがとう"と言った。



大好きが溢れてとまらない。実弥も、名無しさんの頭に手を伸ばして、優しく撫でた。



二人は、繋がったまま笑い合っていた。嬉しくて。幸せで。大好きで。口付けを何度も何度も交わした。フフッと、二人共笑う。



しかし、実弥の我慢はそれ程長くは持たなかった。



「名無しさん……動きてェ。」



唇を離した瞬間に発せられた実弥の切実な声と顔に、名無しさんは声を出して笑った。



そして、実弥が驚く程の、"女"の顔になった。









「きて。実弥。早く、もっと、全部、ちょうだい?」









実弥の理性の糸が切れた。










それでも実弥は、名無しさんの身体を傷付けたくない一心で、ゆっくりと、ゆっくりとしか、動かなかった。前後に腰を動かして、名無しさんの中を確かめるように、筋肉をほぐす。



次第に、内壁の狭さが余裕を持ち始めたのが分かったところで、速さを上げた。



「ん!ァ……あ、…ア…ん!ん」



名無しさんは気持ち良いのだろうか。苦しいに決まってる。まだ痛みが残っているかもしれない。実弥は、気になってずっと顔を見ていた。



視線に気付いたのか目を開けた名無しさんは、自分の腰を掴んでいる実弥の左手首を握った。実弥はすかさず指を絡めて手を繋いだ。



ーーーー実弥、やっぱり手を繋ぐの、好きみたい。ー



繋がれた手の温かさは、実弥の心の温かさ。名無しさんの大好きな、実弥の傷だらけの手だった。



実弥は、先程指で見付けた名無しさんの気持ち良いところ、最奥を、自身の先っぽで突いて押し上げていく。名無しさんは、甘い声が止まらなかった。



「ぁン!あ、ァ!ん…んぁ…!は」



実弥にも、名無しさんの最奥のフニュッとした感触が伝わっていた。



処女の名無しさんの締め付けは、キツい。実弥をかなり追い詰めていた。きゅうきゅうと締め付けられているのだけではなく、実弥が内壁を押し開いている感じだ。



限界が、近かった。





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