バレンタイン クリスマス小説
□mischief or Oath
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「…」
そっと、飛影の部屋に入る。
物音の何もしない、そこに誰もいない…何の気配もない部屋は。無言で蔵馬を迎える。
ただ一つ、ベッドの僅かなしわに、あの人のいた空気が残っているようだった。
「飛影」
小さく呟き、濃いベージュの壁を見つめた。何度も見たことのある部屋の光景も、
数ヶ月ぶりでは遠い世界のようだ。
大きなベッドが、ふと見えた。
シーツに、半妖でないと気付かないほどのにおいに、蔵馬の表情が綻んだ。
ゆっくりとそこに近づいていく…、何度も抱き合ったベッドの上。
と、視線が止まった。
座り込んで、見えた…ベッドの窓脇の…何か。
「なに、これ…」
小さな呟きが漏れた。窓脇から挿す光が、それを眩しく反射した。
「…どうし、て…」
声までも、固まったように、広い部屋に響いた。分厚い壁に飲み込まれそうな声が、
戸惑いの色を醸す。
「飛影……が…」
それを見つめ、大きな目をクルクルと回す。
それに視線が止まり…じっと見つめるしか
せず、…だから、気付かなかった。