バレンタイン クリスマス小説
□mischief or Oath
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「押しつけてきやがったんだよ!」
ちっと、舌打ちをする飛影を、丸い瞳で蔵馬が見上げた。
「それで…この人形…」
「お前の形、してるからだ!」
叫びのような声が、無機質な部屋に響いた。
飛影のその声だけで、ベージュの壁が暗くなりそうなほど。
「俺が人形など置く趣味があるわけないだろうが!」
言い切って、そしてハッと飛影が口を押さえた。
びくと蔵馬の肩が揺らぎ、ぬいぐるみを見た。
ふわふわとした沈黙が、二人の間に広がった。
「…あ」
フェルト生地のぬいぐるみ見つめ…そしてその沈黙を破ったのは蔵馬だった。
「…これ、は…」
ぬいぐるみのそこから手のひらくらいの隙間を空け…目に入ったものがある。
「…どうしたんですか…」
ちいさな、花瓶だった。さくらに似た花が一輪…。
さくらよりも濃い…そして大きな。
「それは…」
飛影の声が勢いを消し、ベッドのシーツと蔵馬を交互に見つめた。