Long novel(10years later)

□第5話
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天に広がる雲と空。


それらは果たして何を紡ぎだすのだろうか―――…


《第5話》


「――女王が、王の元へ戻ったか」

部屋の片隅の机に置かれたチェス盤を眺め、頬杖をついて優弥が呟く。そのチェス盤に広がる局面はルールをまるで無視したものであり、余りに異様だった。

――全て揃う『白』の駒に対し、『黒』の駒が圧倒的に少ないのだ。『黒』にあるのはキングと少数の駒のみである。

そこに優弥は新たに駒を加えた。『黒』のクイーンだ。

(このクイーンは強い。たった一騎で多くの駒を倒す)

これで戦局は大きく動く。しかし、『黒』が不利な事に変わりはない。

「――足りない…」

駒もそれに備わる力も。少なくとも駒が揃わなければ勝利はないのだ。

「…もう少し様子見が必要かな」

溜め息を吐き、優弥が席を立つ。
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