Parallel novel
□空を覆う浮雲・序章
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燃え盛る炎、崩れて行く我が家。鼻を突く血の臭い…全てが自分を蝕んで行く。
目を覚ました瞬間、自分は全て失ってしまったのだと悟り、絶望に打ちひしがれた。
《空を覆う浮雲・序章》
「…先生!綱吉くんが意識を取り戻しました!」
目を覚ますと、真っ白な天井が目に入る。どこからか女性の声が聞こえる。視線だけ動かすと看護婦の姿が見えた。どうやらここは病院らしい。
(…母さん…)
あの状態じゃ恐らく助かっていない。確信が持てた。
慌てた様子で医者が駆け込んでくる。
「良かった!君が助かって。生き残っただけでも奇跡だよ」
嬉しそうに話す医者から目を背ける。
そんな事知らない。何故自分は助かってしまった?