14+41=55!!!
□03.蛭円(ss)
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今夜はよく冷える。
マルコは明日の練習予定をひととおり組み終えて、ベッドに入った。
誰にも触れていなかった布団は、重みはあるけれどやはり冷たい。
軽く身震いをして、張りつめたこの空気に少しだけ、あの尖った肩を思い出す。
「・・・――、」
思い出して、ふとベッド近くのカーテンに伸ばした手を止めた。居所のなくなったのを誤魔化すように、髪をかき揚げてため息をつく。
「・・・恋する乙女か、っちゅう話」
今、何してるんだろう、なんて。
カーテンを開けて外を見て。あいつの家はどの方角だっけ、そんなことを考えて。窓に指を触れて。濃紺に溶け込んだ世界の中で、愛しい悪魔に想いを馳せる。
―そんなの、違う。
俺は、そんな人間じゃない。もっと格好良くって、もっと冷静で薄情で。
もっと、あいつが居なくても、一人でだって生きていける、はずだ。
「・・・かわいくないっちゅうの」
大の男がこんなことしたって。もちろん、女の子ならさぞかわいらしいだろう。
けど、俺は、違う。
もう一度ため息をついて、布団に潜り込んだ。やっぱり冷たい。
―あいつも、今日みたいな夜は寒がるんだろうか。触れれば、灼熱の太陽みたいに、あんなに熱いのに。
「・・・寒、」
ああ、だからこんな夜は。
ぎゅっ、と布団を引き寄せる。
こんな夜は、すぐに明けてしまえばいい。朝がやって来れば、痛いほどの灼熱が痛いほどに俺を刺すから。
そうしたら、
こんな俺も、夜と一緒に消えるのに。
03.mid night.