14+41=55!!!

□03.蛭円(ss)
1ページ/2ページ




今夜はよく冷える。

マルコは明日の練習予定をひととおり組み終えて、ベッドに入った。

誰にも触れていなかった布団は、重みはあるけれどやはり冷たい。
軽く身震いをして、張りつめたこの空気に少しだけ、あの尖った肩を思い出す。


「・・・――、」

思い出して、ふとベッド近くのカーテンに伸ばした手を止めた。居所のなくなったのを誤魔化すように、髪をかき揚げてため息をつく。



「・・・恋する乙女か、っちゅう話」

今、何してるんだろう、なんて。
カーテンを開けて外を見て。あいつの家はどの方角だっけ、そんなことを考えて。窓に指を触れて。濃紺に溶け込んだ世界の中で、愛しい悪魔に想いを馳せる。





―そんなの、違う。



俺は、そんな人間じゃない。もっと格好良くって、もっと冷静で薄情で。
もっと、あいつが居なくても、一人でだって生きていける、はずだ。



「・・・かわいくないっちゅうの」

大の男がこんなことしたって。もちろん、女の子ならさぞかわいらしいだろう。
けど、俺は、違う。






もう一度ため息をついて、布団に潜り込んだ。やっぱり冷たい。

―あいつも、今日みたいな夜は寒がるんだろうか。触れれば、灼熱の太陽みたいに、あんなに熱いのに。





「・・・寒、」

ああ、だからこんな夜は。


ぎゅっ、と布団を引き寄せる。







こんな夜は、すぐに明けてしまえばいい。朝がやって来れば、痛いほどの灼熱が痛いほどに俺を刺すから。



そうしたら、
こんな俺も、夜と一緒に消えるのに。
















03.mid night.



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ