毒膳

□ORPHAN HEAVEN
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その日は、茹だるような熱帯夜で。





熱気で何も食べる気が起こらないし、
涼を求める気持ちもあって、
アイスクリームでも買おう、と。

帰路の途中にあるコンビニに入った。



芯まで冷えるような、効きすぎの空調、を期待していたのに、
エコスタイルのご時勢、店内の冷気は肩透かしもいいところだった。


これは本当にいよいよ、アイスの恩恵にでも与らないといけないようだ。

とりあえず、手当たり次第カゴに放り込む。
ついでに氷と炭酸水も入れ、少し考えて、
レジ脇の冷蔵コーナーで、冷菓なんかも買う。
このカゴの中身を見たら、張飛などは卒倒するに違いない。



会計を済ませて、店を出る。
煮詰めたような空気が、うわっと体を取り巻く。
首筋に伝う汗の感触に嫌悪感を抱きながら、
両手をふさいだ山ほどの「食糧」のせいでどうにも出来ない。


家に着いたら、一にも二にも先に、冷たいシャワーを浴びよう。
そう思いながら足を踏み出して、何の気なしに、店の脇の、薄暗い路地に目をやる。



そこに、人が座り込んでいた。
膝を抱くようにして、顔を伏せている。
浮浪者か、そうでなくとも関わると厄介な事情があるに違いないのだ。
目を逸らそうとして、その頭が不意に持ち上がる。
ぱっと目が合った。

頼りない街灯に照らされて、微か判別出来るその顔は、男で、まだ若かった。

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