毒膳

□ORPHAN HEAVEN
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趙雲の仕事は、世間で言うところの、裏家業、というものだった。



この国に内乱が勃発したのは、ちょうど10年前のことだ。

当時のこの国の元首が、暗殺された日でもある。

元首を殺害した男は、国軍のトップにいた董卓という人物だった。

クーデターにより、この国は軍事政権下に置かれることとなる。


だが、それも長くは続かなかった。
すぐに、反勢力が現われ、戦闘が始まった。

反勢力軍の指導者は曹操といい、彼もまた、この国の軍人だった。


内部分裂により、軍政は斃れた。
恐怖統制だけで律せるほど、董卓には人心を掴むことは出来なかった。


董卓による軍政は、時間にすればほんの三年に満たなかった。

しかし、残された傷痕は深く、大きかった。

散発的にではあるが、戦闘やテロが絶えない。

都市部と農村部での貧富の差も歴然としていた。

そして都市には、犯罪が頻発している。


復興は驚くほど早かったが、それもほぼ都心のみの話だ。
特にこの街は、先進国並の生活水準や文化レベルを保っている。


沿岸部に立地している、というのも理由だが、
それ以上に、倭国の援助によるところが大きかった。
倭国は、曹操が対立を表明してすぐに、軍事介入もしている。


董卓がいた頃に比べれば、状況は劇的に良くなったのは確かだ。
だが、暫定政権を掌握しているのが曹操だということに、
不満の声が上がっているのも事実だった。


結局、あの男が成り代わっただけではないのか、と。

多少横暴に見えるかもしれないが、
曹操のやり方は、合理的で的を得ていた。

不満があっても、誰も過激な行動に出ようとしないのは、
やはり、これが最も正しい道だと思っているからだ。


「だが、あまりにも情がない」



そう言ったのは、趙雲の「雇い主」だ。

この人のために、張飛や諸葛亮、そして自分は戦っていた。



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