短編
□派手に暴れろ!
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ザシュッ!
目の前を赤い物が飛び交った。顔に、服にベッタリと赤い物がついたが、俺はそんな事一切気にしていなかった。
きっと珍しく機嫌が良かったからなのだろう。
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錆びついて 崩れそうだった ぼろぼろ心は
『一人きりの意味を考えていた。考えて考えて狂いたかった。しかし狂うことさえ俺には、叶わなかった』
乾ききっていた 干からびそうだった ひりひり痛いくらい
『誰でもいい。声を。ぬくもりを。何かを。俺以外のものを、俺にくれ』
何かを感じて 誰かと話して それが苦痛なほど
『俺は止まらように、まっすぐ走り続けた。ただ餓えを、渇きを満たすためだけに剣を振るい続けた。誰かと話したいのに止まってしまうことが怖かった。苦痛だった。敵を、刃向かう者を、殺意のある者を、見つけ殺し続けないと、俺が俺でなくなってしまう気がした』
微笑みを返して 誰かを愛して ぜんぶできやしなかった
『その結果、俺は…。
笑うことを初めて教えてくれたあいつが血だらけの状態で見つかった時、俺は「ヒヒヒ」と笑った。違うと思いながらどうしたらいいのか分からなくて、ただ笑うことしか出来なかった』
そのうち大丈夫になるさ、なるさ、なるさ
『あれから随分時が流れた気がする。どれぐらいたったのか分からないぐらい長い、長い時を過ごした』
そのうちきみを好きだ、好きだ、好きだって
『「トマトクン」
皆が俺を呼ぶ。あの忌まわしい名ではなく「トマトクン」と大事な仲間が呼んでくれる』
うるさいくらい わめきちらすから
『だから、俺はー』
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「ぬおおぉっ…!」
ザシュッ!
目の前の最後の一匹を豪快に切りさいた。
「お疲れ、トマトクン。怪我は?」
「ないぞ。そっちはどうだ」
「こっちも今終わって怪我もな……うわ。また来た」
「これまた仰山きおったなー」
マリアが敵を見ながら全員に指示をだしている間、俺は武器を構えなおし皆を見回した。俺の行動にマリアは疑問を持ったのかどうしたのか聞いてきた。
「そうだな。俺からもたまには指示を出そうかと思ってな」
そして俺は口角を上げた。
〔「派手に暴れろ!」〕
(「「「「「了解!」」」」」)
うるさいくらい わめきちらすから
『何があってもお前たちを守る。失いたくない大切な場所だから』