長編
□最悪な出会い
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止まっていた足を再度動かし同じ歩調で歩き始めたアジアン
「(ようやくここまで来れた)」
特に何かやりたい事があるわけではない。何か欲しいわけではない。
ただ、あの場所、あの世界から抜けだしたかった。
そこにいるだけ、あるだけの人形のような生活なんてもう真っ平ごめんだ。
ボクはボクの人生を生きたい。
ボクは『人』だと思いたい。
ただそれだけだ。
それを見つけるためボクは−−−
「(……ン?)」
数百メートル先に何かいる?
アジアンは眉を潜めた。
獣達などではない。人のような感じがする。
おそらく相手もこちらに気付いたんだろう。気配が消えた。
「(ただ者ではないな)」
全然気配を感じなくなったではないか。普通の人ならばいくら気配を消そうとも自分は気付く自信がある。だが
「(特に気にする事もないか…)」
相手が攻撃してくればその時に対応すればいい。
だから普通に歩き続けた。
しかし
グルルルルル
「………………?」
何だ?今の音は…?獣?
しかし不思議な事に近くに気配がない。
キュルルルルル
また?
グウウウウウウ
もしかして……
「誰かいるのかい?」
「断じて誰もいません!」
高いソブラノの声が響いた。