長編

□最悪な出会い
2ページ/7ページ



止まっていた足を再度動かし同じ歩調で歩き始めたアジアン


「(ようやくここまで来れた)」


特に何かやりたい事があるわけではない。何か欲しいわけではない。

ただ、あの場所、あの世界から抜けだしたかった。

そこにいるだけ、あるだけの人形のような生活なんてもう真っ平ごめんだ。

ボクはボクの人生を生きたい。

ボクは『人』だと思いたい。

ただそれだけだ。

それを見つけるためボクは−−−


「(……ン?)」

数百メートル先に何かいる?

アジアンは眉を潜めた。

獣達などではない。人のような感じがする。

おそらく相手もこちらに気付いたんだろう。気配が消えた。

「(ただ者ではないな)」

全然気配を感じなくなったではないか。普通の人ならばいくら気配を消そうとも自分は気付く自信がある。だが

「(特に気にする事もないか…)」

相手が攻撃してくればその時に対応すればいい。

だから普通に歩き続けた。

しかし



グルルルルル



「………………?」

何だ?今の音は…?獣?

しかし不思議な事に近くに気配がない。


キュルルルルル

また?

グウウウウウウ

もしかして……

「誰かいるのかい?」

「断じて誰もいません!」

高いソブラノの声が響いた。
 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ