Novel
□初対面
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海に囲まれた大きな港町・クチバシティ。 貨物船や豪華客船も行き交う明るくて賑やかな街だ。
この街を目指して旅を続けるトレーナー達がいた。
一組目。秋・咲智ペア。
「お〜い…まだかよ〜?そろそろ着いてもいいんじゃねーか?」
「もう少しだよ。この地下通路を通ればクチバシティだから。」
ノロノロと歩きながら愚痴をこぼす秋に咲智はスタスタと慣れた足どりで先を歩きながら言う。
二人の前には薄暗い地下へと続く階段があった。 まだ昼間だというのに階段の先は真っ暗で何も見えない。
「バロンのフラッシュで明るくなるだろ。さっさと行こうぜ!」
秋はそう言ってモンスターボールからバロンを出すと階段を降り始める。 その後ろをバロンと咲智が着いていった。
二組目。真森とライド達。
「この地下通路を通ればクチバシティだ!」
真森がそう言ってライド達を振り返った。
「まぁ…。何て暗いのかしら。気味が悪いわ…。」
マリンはあまり通りたくないようだった。しかし……
「ウチに任しとき!ウチのフラッシュさえあれば一気に明るくなるで!」
「何よ!あたしの立派な尻尾の炎があるじゃない。真森、あたしの方が頼りになるわよね!」
二匹はそれから喧嘩になってしまった。 お互い一歩も譲らない二匹に困った真森は結局レイムのフラッシュとライドの尻尾の炎に頼って進む事にした。
「…あの、お二人さん?俺、歩きにくいんだけど…。」
それもそのはず。右腕には真森に自分をアピールしようとライドがしっかり捕まって歩いている。 左足にはこれまた自分をアピールしようとレイムがガッチリと捕まっている。 真森は頭にしがみついて怖がっているマリンに萌えながらも地下通路の出口を目指した。
二組のトレーナーが地下通路に入った後、また一人地下通路に入ろうとしている者がいた。
蓮&バンジだ。
「へへっ、地下通路って暗いから通行人の物盗み放題だぜ。」
ニヤニヤと笑いながら蓮はバンジを肩に飛び乗らせた。
「よっしゃ、行くぜ!」
余裕そうに鼻唄を歌いながら蓮とバンジは暗い階段を意気揚々と降りていった。
一方、1番最初に地下通路に入った秋達はバロンの明かりを元に順調に進んでいた。
「バロンがいて良かったなー。 明かり無しじゃまともに歩けねーぞ。」
バロンは秋に褒められて嬉しそうに歩いた。 その時1番後ろを歩いていた咲智が何かの気配を感じて振り返った。 その視線の先に暗闇の遠くの方からこちらにゆっくり近づいてくるぼんやりとした炎とまばゆい光、そしてボソボソと聞こえてくる一人の人間の話声だった。