※サンプル

□雨音(IR)
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晴れていればもう外は明るくなっているであろう時間。
しかし今、カーテンを閉めているこの部屋の中は少し薄暗い。


RYUICHIはゆっくりと目蓋を上げ、ベッドヘッドに置いている携帯に手を伸ばした。


「7時…」


まだ少しだけ掠れた寝起きの声でぽつりと呟くと、外の音に耳を傾ける。


ザァザァとまではいかないが、しとしとと雨の降る音がする。

きっと突然やってきた恋人のせいだな、なんて一人で考えて、少しだけ口元を弛めた。


その恋人は、まだ自分のすぐ隣ですやすやと眠っている。


二人で横になってもかなり広さのあるRYUICHIの家のベッド。「寝心地がいいからこのベッド好き」と言っては、かなりの頻度でやってくる恋人。


そしてそう都合をつけては、いつもここでRYUICHIを抱く。昨晩もRYUICHIが眠ろうかと思った時にいきなりやってきて、「ベッド貸して」と言ってきた。


RYUICHIも「仕方ないなぁ」と苦笑しながらも、内心少しばかり期待してベッドに潜り込む。


きっと、はじめからそうなることを予感していたように、期待に体が疼くのを止められない。


『INORAN…』


欲に掠れた声で名を呼べば、ギュッと強く抱き締めてくれる。


『RYU…』


熱っぽく耳元で名を呼ばれれば、あっという間に堕ちていく。


そうして何度も体を開かれ、甘い痛みに意識が遠のいてしまいそうになるまで愛される。
それがたまらなく好きなRYUICHIは、いつも彼を招き入れる。


RYUICHIは薄暗い部屋で彼の整った顔をじっと見つめた。
昨晩激しく抱いてきたのが嘘かのように、寝顔はとても穏やかで子供のようだ。

しかしRYUICHIを抱く時の彼は、欲に濡れた瞳でRYUICHIを見つめ、いやらしく歪められた唇で卑猥な言葉を吐き、攻め立てる。
嫌だと叫んでも、許してと泣いても、RYUICHIの隠された部分を少しずつ暴くように、激しくRYUICHIを抱いた。



「ッ……。」



INORANの顔を見ながらそんなことを考えていたRYUICHIは、昨晩彼を受け入れた場所にズキッと甘い痛みが走った。
そんな自分の体に苦笑しながらも、RYUICHIはINORANの頬に手を伸ばした。

頬から唇に手を移動させて、少しかさついた唇に触れる。


たったそれだけのことなのに、自分の息が熱く湿っていく気がする。


「INORAN」


少しだけはっきりした声で名を呼んでみる。
早くその瞳に自分を映してほしい。見つめてほしい。
一人の時間が嫌で、早く起きてと声を掛ける。


それに昨晩INORANの翌朝の予定を聞いていたRYUICHIは、冗談抜きでそろそろ起こさなければと思っていた。

ぼんやりしていたらもう30分はたっていて、8時には起こして準備をさせなければ間に合わない。


彼を起こすのは至難の技なのだから。


INORANはどうやら葉山に曲を依頼していたらしく、彼との打ち合わせを控えていた。

お互いなんだかんだと忙しく、時間が取れそうなのが朝しかなかったらしい。


RYUICHIはベッドに寝転んだまま、INORANの肩を揺すった。



「INORAN……起きてってば。遅刻しちゃうよ。」


こんな声じゃ起きないのは分かっていたが、昨晩愛された体はまだだるく、声にも力がない。


RYUICHIはぴくりともしないINORANに呆れてため息をつくと、先程より強めに肩を揺すった。


「INORAN、葉山っち待たせると悪いから……。」


「ん〜……」
やっと声が聞こえたと思ったら唸っただけで、起きる気配がない。


痺れを切らしたRYUICHIは本気を出そうと息を吸い込んだ。


「INORANッ!いい加減に…………ぅわっ!」


RYUICHIが寝起きにしては大きすぎる声で名を呼ぶと、いきなり体を引き寄せられてふわりと抱き締められた。

その瞬間にRYUICHIの心臓がドクリと跳ねて、起きたのかとそっと下から見上げてみる。


するとINORANは無意識だったのか、まだ目を閉じて眠っている。



(……なんだ……寝てるのか……)



そうがっくりと肩を落としたが、無意識での行為で抱き締められたのが嬉しくて、RYUICHIはその胸に額をそっと擦り付けた。
するとINORANの手がそっと頭に回されて、優しく髪を撫でてくる。
それは寝ているのが嘘のような優しい手つきで、RYUICHIは驚いてまた彼を見つめた。


雨の匂い、雨の音、そして愛しい恋人の匂いに、RYUICHIの胸が甘く痛む。
溢れ上がる愛しさに目の前がじわりと滲んで、そっと目蓋を閉じた。
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