†短き夢†
□拍手お礼小説(泰明夢)
1ページ/1ページ
とある、朝の出来事。
「おい、起きろ」
しーん…
安倍邸。泰明は毎朝寝坊三昧の少女を起こすため、彼女の部屋に踏み入っていた。
すやすやと眠る幼げな表情に、泰明はしばし目を奪われる。
「ん…ぅん……」
少女が身動ぎをするたびに、泰明は理性を保つのに必死だった。
「……まだ起きぬつもりか」
早起きを好む泰明は、しばし柳眉を寄せていたが、やがて少女の体をゆすり始めた。
「いい加減に起きろ。朝だ」
「ん……」
ようやく、少女の瞼が持ち上げられた。
そして、
「……って、キャァアァァア―――ッッ!!!」
「(Σビクッ)」
ガターン、スッテン。
盛大な奇声と騒音をたてて、少女は部屋から飛び出して行った。
それもそうだ。
朝っぱらから若い男、しかも好きな人の顔が間近に飛び入ってきたのだから、若い年頃の娘は勿論動揺する。
しかしそんなことを知らず、一人部屋に取り残された泰明は。
「いったい、何だというのだ」
やはり、鈍感というか鈍いというか。
それから、少女はしばらく朝寝坊をしなくなったとか。