故に赤き大地を蝶は舞う

□05 裂界武帝
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「秀吉はさ、苦しくないの?」
「――……何を言うかと思えば、」
そう言って彼は苦笑する。

「だって、縛られてるじゃない。」

私は何も無い空間に手を伸ばして眼を細めた。

愛する人を己の手で殺めて、親友を裏切り、悪と罵られ、自己嫌悪に縛られて。



「自由は、必要じゃないの?戦いなんかより、ずっと、ずっと」

「……やも知れぬな。」
「だったら……!」

 戦なんか止めてと言葉を続けようとしたが、その言葉は彼自身の声に阻まれた。



「確かに我は、多くの罪を犯した。……なんの罪もない者を殺やめ、慶次を裏切り…揚げ句、残った友の命を救う手立ても見当たらぬ…。


故に我を尊ずる民衆には悪いと思っておる。我を尊敬し、我を敬い、崇め奉り、信じている民が、我がそのように持て囃される程偉大な人では無いとも知らぬ。」




 彼が薄く笑う。彼の視線の先にはどこより賑わう城下町が見えた。

「だが…我は唯一残る民を守らねばならぬ。数多の民衆を纏めるには力がいる。
力を恐れ、国を襲う国がある。……多少なりともいずれは主が守らねばと思ったはずの民が飢餓に怯え、血を流して死に絶えて逝く。

我にそれは耐えられぬ。」



成果には犠牲だ、と彼は呟いた。










エターナルストーリー
(犠牲をださねば済われない)
(そんな世界なら要らない)

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