故に赤き大地を蝶は舞う

□08 忍風迅来
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武田軍は今日も熱い。

「ぅおやかたざばぁぁあぁぁぁぁあっ!!」
「ゆきむるぁぁあぁっ!!」
「ぅおゅぁくぁたずぅぁばぁぁぁぁっ!!!!」
「ゆっきむるぁぁあぁ!」
「…………はぁ」

毎朝恒例の殴り合い……否殴り愛。
今日より恒例化される(らしい)道場での修業を終えて、それでも元気な主人二名を見守る忍が一人。
オレンジの髪を靡かせて迷彩柄の上着を着ている彼は頬杖をついてふて腐れていた。

「お疲れ様だねぇ佐助。」
「本ッ当俺様って苦労症だよー。だいたい何さ、天狐仮面って…」

わざとらしい彼の言い方にクスリと笑みが漏れる。
直接の主人である真田幸村に殴られてできた傷痕に薬を塗り込む。
あぃてっ!と彼が肩を持ち上げた。


「まぁ、それが佐助の宿命だわな」
「…俺そんな宿命ヤなんだけど…」
ジロリと睨まれて私は軽く肩を竦める。あ、幸村が木の幹に頭ぶつけた。

「何とか云ったらどーなの」
「ぁうっ」
頬を指で指されたので唇を尖らせればもう一発来そうだったので口を噤む。に、しても何とか言え、と?ふむ。


「佐助は闇の世界よりこっちのが合ってるよ」
「―――――へ?」

佐助は驚いて目を見開き手の平から顎をずらした。

「いや、なんか言え云うから素直に直感ぼやいただけだけど…どうかした?」
「…い…いや、……。」

何かを考えるように黙りこくってしまった彼を一瞥し、私は熱血二人組に視線を移した。

奇声を発しながら親方様にタックルしていく幸村を親方様はがっちり受け止める。
そのまま取っ組み合いに突入したのでぼうっとしていたら、声がした。


「ありがと、な」










鬼のような冷酷さと、普通のような平和
(はにかんだ佐助は嬉しそうだった)

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