故に赤き大地を蝶は舞う

□09 神速聖将
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「あの、」
「なんです、わかきいかいのみこよ。」
整った庭を臨む部屋には私とこの人一対一という異例の状況があった。

薄く微笑む姿は私より、寧ろあなたが神です!!と叫びたくなるぐらい神々しい訳で、かすがが一発で落ちた理由も分かる。

上杉謙信様親衛隊隊長かすが(漢字ばっか)は今敵地に間者…スパイに行っている為本当に一対一だ。


「謙信様は…」
「けんしん、でかまいませんよ」
「う…けっ…謙信…サマ…」
「けんしん」
「…、謙信…………」
「なんです?」

あぁ、なんでこの人は輝かしいんだ!どんな事しても美し…なんか汗とかかかなさそうだ。
とりあえずそんな考えは頭の隅に追いやって私は真っ直ぐ見つめた。


「あの、どうして戦うんですか?」
「なぜとは?」

「謙信、は、平和を唱えているのに…戦うから…」

ふ、と笑みが浮かんだ。遠くでシシオドシが高らかと鳴る音が聞こえる。
「わたくしのつるぎがいまだ、おのれのそんざいいぎをみいだしていないからです。」

視線を庭に移したから私も視線を庭に移す。静寂な雰囲気の庭で鯉がひとつ跳ねる。

「いまはまだわたくしのつるぎでもかまいません。しかし、いつかこのらんせがおわったとき、しのびはいばしょをうしないます。」

瞳と瞳がばちりとかちあった。

「いくさがおわるまで、わたくしはわたくしのつるぎをそばにおくだけです」


私は更に問う。

「…謙信の傍に置くつもりは無いの?」
「…それはつるぎがきめること。」








想い、清く、気付かない
(貴方が云わなければ彼女は決められないでしょうに)

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