武装戦線
□Special day
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突然の雨。
それも滝のようなどしゃ降りの雨に打たれ、唯と小枝はコンビニの駐車場で雨宿りする事にした。
濡れたYシャツは透けてブラは丸見えになり、二人共胸元は隠しているものの背中はくっきりとその色を写し出している。
「さっきまであんなに晴れてたじゃんね!?」
「すぐ止むとは思うけど、もう手遅れだねぇ。」
ため息をつきながらまだ止みそうにない空を見上げる。
どんよりとしたその雲に、二人のテンションは下がる一方だ。
そんな時、突然二人がいる駐車場に数台のバイクが入ってきた。
小枝が一瞬振り向くと、すぐさま前へと向き直る。
「どうした?」
「ぶ…武装…」
コソッと言った小枝の言葉に唯も一瞬振り向き、そのバイクの持ち主の背中に描かれた文字を見る。誰がどう見ても武装戦線のロゴだ。
武装といえばあまり噂は聞かない。バイクを乗り回し平気で喧嘩をする。
頭はボクシングやってて、名前は確か…
「龍信さん大丈夫ですか?」
「あぁ。」
「俺、コンビニでなんか買ってきます!」
「悪いな文太。」
((逃げなきゃ…))
二人共にそうは思うがなかなか動き出せない。少しの間無言で硬直しお互い横目で合図をすると、心なしか小降りになってきた外へと一歩踏み出した。
その瞬間背中に何か温かい物がかかり思わずその足を止める。
自ずと互いの背中を見ると、今さっき目にして恐れたライダースジャケットがかけられていた。
「目に毒だ。着てけ。」
「え…でも…」
「次会った時でいい。」
それ以上何も言えず、タンクトップになった彼がTシャツ姿一人とライダース姿一人を引き連れ走って行くのを見送った。
「か…っこよくない?」
「えぇ!?まぁ…でも武装だよ!?龍信って言ったら頭じゃん!」
「ねぇ唯!このジャケット龍信さんのだと思う!?それとも下っぱ!?」
「知らないよそんなの!」
「お礼したいな…龍信さんに…」
そう言いながらうっとりする小枝を、唯は少し呆れ気味だ。
(目に毒とかかなり失礼な奴じゃん…)
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