CROWS

□僕の初恋
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小枝筆
ゆち様筆




塾の帰り、カツアゲされていたところを一人の男が通りすぎる。あきらかに金持ちの坊っちゃん風のそいつに標的を変えたが、逆に複数をやっつけた。そのまま颯爽と去っていく彼を僕は呼び止める。

「た…助けてくれてありがとう!」
「助けたわけじゃない。」
「ぼ…僕箕月っていうんだ!君は!?」
「…天地、寿。」
「寿…くん…」

こうして僕たちの恋が始まった…




その日から僕は寿くんの事が頭から離れず彼の事ばかり考えていた…また会えるんじゃないかと塾の帰りに助けてもらった場所で待ってみたりもしたが寿くんは現れない…寿くんへの思いは日々募るばかり…そんなある日学校帰りに見覚えのある後ろ姿…ひ、寿くん!




思わず声をかけようとしたが、向かいに立つ二人の存在に気付き身を隠した。
一人はなんの特徴のない青年。もう一人は顔に一本の傷がある。
会話こそは聞こえないがなにやらいい雰囲気ではない。(この野郎!僕の寿くんになにしてんだ!!)




僕は寿くんに恩返しがしたくてあの二人をどうやったら追い返せるか僕の県内でトップ3に入る頭を使い考えていたがいい案が浮かんだ頃にはすでにあの二人は寿くんの前から消えていた。やっと寿くんと話せる!と心を弾ませながら寿くんの元へと僕は走った。たが寿くんの足が早いのか僕の足が遅いのかわからないが(多分後者ではないと思うが)なかなか寿くんに追い付くことができない。




仕方なく僕は寿くんの後をつける事にした。電柱から電柱に渡り隠れ、音を立てずに忍者の如く。
そして寿くんは、とある高級なマンションへと入っていった。オートロックなのか、壁のパネルを慣れたように触れる。
その様子をじっくり観察していると、寿くんがいきなりこっちに気がつき振り向いた。

「!!」
「誰だ。」

ゆっくりとこちらへ近付く。ヤバイヤバイと思いながらも、僕は足がすくんでうごけなくなってしまった。





「さっきから俺のあとついて来てなんかようか?」
「あっあのっ僕、寿くんに助けてもらったお礼がしたくて!」
「いつ助けた?」
「数日前かつあげされてる所を…」
「…あぁあれか」

僕はあの時の事を寿くんが覚えていてくれた事に嬉しくなり

「これから少し時間空いてる?」

なんて思い切った事を言っていた。




すると意外な事に、寿くんは少し笑いながら

「丁度いい、俺も話がある。少し付き合え。」

そう言って、家に入る事なくスタスタと歩いて行く。
これはまたとないチャンスだ。少しスキップしたくなる気持ちを抑えて寿くんについて行って、近場の公園のベンチに並んで座る。
それはまるで、恋人同士のようだった。




僕は寿くんの隣に座れていることやさっき寿くんのキラキラ輝く笑顔が見れた事に舞い上がり「今日のおかずはこれだ!」と心の中でガッツポーズをした。

「おい。話があるんじゃねぇのか?」

と寿くんに話しかけられ僕は我にかえった。不覚にも僕は寿くんと少しでも話たいと思っていたものの何も話す内容を考えていなかった。何か言わなければと思ったが何も思い付かない。とりあえず

「ひ、寿くんの髪の色綺麗だね!」

なんて言ってみたがなんでもっと気の利いた事が言えないのかと後悔した。




「お前、頭いいのか。」

見事に僕の話はスルーされたがかまわない。寿くんが僕に興味を持つなら一言も交わさない放置プレイだって気持ちいいくらいだ。しかも唯一の取り柄である勉強に関してなら誰よりも自慢できるし、それでも寿が物足りないならもっと勉強して全国一位にでもなってやる。

「いい方だと思うよ。自慢じゃないけど、ここらで一番レベル高いあの学校には余裕で入れるくらいだからね。」
「フッ。悪くないな。」




悪くないな…?どういう事だろうと僕は寿くんの言葉に疑問を持った。…ハッ!そういう事か!わかったぞ!寿くんは僕を恋人にしたいけど頭が悪かったら嫌だと思って聞いたんだ!それで僕の返事を聞いて「悪くないな」て言ったんだな!あぁ寿くん…君も僕の事を思っていてくれてるんだね!僕達は相思相愛だったなんて…なんで僕はもっと早く気付かなかったんろう…僕は愛する寿くんの言う事なら露出でもするし君のペットになってもいい…寿くんが喜んでくれるならそれでいいよ…寿くんの喜びは僕の喜びだ!と頭の中でいろんな妄想が膨らみ下半身まで膨らんでいたので寿くんにバレないように鞄で隠した。




「お前にはそのうち働いてもらう。」

盛り上がったそれが萎えるどころか更に熱を持つ。

「は、働くって…」

それは寿くんからの告白なのだと僕は思った。働くって事は養うって事で、もしかしたら告白どころかプロポーズなのかもしれない。勿論それには甘い夜もあるわけで… どちらかと言えば壊すより壊されたい僕はきっとベッドの上で寿くんに身を任せるのだろう。
働き疲れ、乾いた身体を寿くんが潤してくれるなんて…天国だ。

「うん!頑張る!」
「そのうちの話だ。それまでお前にはおとなしくしててもらう。」

そのうちだなんて、寿くんたら照れ屋なんだから!




こうして僕と寿くんはめでたく結ばれ何回もデ-トを重ねた。寿くんは放置プレイが好きでたまに僕の話を聞いていないことがある。それに僕も快感を覚えてしまった。そんな僕を見て楽しむ寿くん。そんな寿くんだが僕を大事に思っているからかなかなか手を出して来ない。しかし僕は寿くんと時間を共有しているだけで幸せを感じているからそんなことは気にしない。だけどやっぱり少しは期待をしている訳で…寿くんに会う時は毎回勝負下着で会っていたりする。
あぁ早く寿くんと一つになりたい…寿くん…躊躇わなくていいんだよ…僕の心の準備はもぉ出来ているから…僕を美味しく食べて!と僕は夜な夜な盗撮した寿くんの写メを見たりトイレで目撃した寿くんJr.を思い出しながら寿くんに美味しく食べてもらえる日を想像し自ら性的快感を得ていた…




「寿くん!僕、あの高校受かったよ!」

そして合格発表の日。当たり前にある受験番号を見つけた直後、僕は真っ先に寿くんに連絡を入れた。おめでとうなんていう言葉は返ってこない。電話先では何やらごちゃごちゃと騒音が聞こえ、寿くんも自分の合格発表に向かっていた事がすぐにわかった。

「寿くんは?」
「聞くまでもないだろ。」
「だよね!おめでとう!」

今夜はパアッと一発お祝いしてもらおう。今は嬉しそうな声を上げる事もないけれど、きっとその時になれば優しく、そして強く抱かれてこう言うんだ。
『よくやった箕月。さすが俺の箕月だ。』って。
そうと決まればまず場所だ。やっぱり初体験は寿くんの香りがするベッドがいい。

「じゃあ寿くん、今夜…」
「お前は暫く大人しくしとけ。時期がきたら連絡する。」
「え?時期って…」
「働いてもらうと言っただろ。それまで俺の事は誰にも話すな。いいな、町で見かけても話しかけるな。」
「ちょっ!寿くん!?」

寿くんはそう言い残して勝手に電話を切ってしまった。あぁ、また放置プレイか。でもまぁいいだろう。きっと寿くんは初体験の僕を大事にしたいが為に距離を置くんだ。時期と言うのは僕がもっとちゃんと覚悟を決められた時。その時は激しく僕を求め、壊れてしまう程にベッドを軋ませる。

「フフ…フフフフフ…」


愛されてるなぁ。僕。




fin.

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