ハリポタ長編2

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「なあ、待ってよ」



早足で進む靴音の後から大股で歩いているのかワントーン低い靴音がカツカツと聞こえる。

人気の無い廊下でその2つの音は響き、途中通り過ぎた扉からは微かに教授が教鞭をとる音が聞こえてきた。

声を掛けられても歩みを止める様子もない前方の靴音の主が更に速度を増してぼそりと呟く。



「・・・授業はどうしたのブラック」



やっと相手をしてもらえたと言いたげに笑みを零して、シリウスは返事を返した。



「今は空き時間。エイルもだろ?」

「アウルヴァング先生と呼びなさい!
ていうか、なんで知ってんのよ!」

「エイルの空き時間なんてとっくの前から調べ済み。

いいじゃないか、たった3歳差だろ?」

「よくない。あたしは先生よ!きちんと敬意を払いなさい!」

「はいはい」

「ていうかついてこないで」

「エイルの部屋に行って良い?」

「いいわけないでしょ」

「じゃあ廊下で爆発スナップを爆発させても良い?」

「いいわけないでしょ!ばか!」

「ひでぇ」



ちなみにこの会話中、ずっと歩いている。
エイルはこの男を何とか撒こうと思わぬ所で角を曲がったり
動く直前の階段に飛び乗ったりするが、流石はクィディッチのビーター
機敏な動きで一点の無駄もなく着いてくるのがとても悔しい。

こちらは体力の限界を感じているというのに、向こうは微塵の疲労も感じていない様だ。



「これ以上付き纏うおつもりなら、減点するわよブラック」

「長い付き合いなんだから、いい加減名前で呼んでよ」

「いきなり何よ・・・

長い付き合いなのはっ、あんたがあたしの在学中から何かと突っかかってきたからでしょう!?」

「早く」

「1人の生徒だけ名前で呼ぶわけにはいかないし・・・

だいたい腐れ縁のブラックを名前でなんてぜっ「呼べ」!」



靴音が止まる。
シリウスが壁に彼女を押し付けたからだ。



「ほら、呼んで」

「・・・」

「簡単じゃないか、エイル」



在学していた頃は自分よりも背が低かったくせに、今は頭一つ分、
いやそれ以上の身長をもってして見下す彼の瞳をエイルは見れなかった。

前々から美形だと思っていたが・・・卒業してからホグワーツで教師をするために色々勉強して・・・
たった1年ほど会っていなかっただけで、こんなに成長するものなのか。

思わず顔が赤くなるのが自分でも分かった。
このままだと、彼の思うつぼだ。
それだけは避けたい。年上の威厳も込めて。



瞳を伏せて、思い切り息を吸った。



「・・・・・っっっ

グリフィンドール10点減点!!!

授業がないなら早く寮に戻りなさい!」



シリウスはいつもの笑みを浮かべて逃げて行った。








「照れた顔も可愛いな」

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