ハリポタ長編2

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「何だ、まだ諦めてなかったのか」



呆れたようにそう言う相棒の言葉に「うるせぇ」と返した。
周りの友は皆この想いは叶わないだろうと言う。
けれど言いたいやつには言わせておけ、が俺の言い分だ。
結局どうするか、選択するのは俺と彼女だ。



どうしようもなく好きな人がいる。



出会ったのはホグワーツに入学して3年経った頃。季節は春
麗らかな日差しの元、中庭の白いベンチで居眠りしている彼女に出会った。
当時6年生だった彼女に、俺は一目惚れをしたんだ。
その時は恋とか愛とか、そういう実態のないものはよく分からなくて、身体から湧きあがるふわふわした感情に気がつかないでいた。
けど俺は彼女によく懐いていたし、彼女も俺を可愛がってくれた。

彼女が7年生になって、卒業間際になると急に焦りだした。

そして気づいた。
俺は彼女が好きだったのだと。

卒業式の日に告白した。
返事はNO

そうだろうと思った。
彼女は俺を弟としてしか見ていなかったんだ。

俺の初恋は儚く散った。



けれど転機は突然やってくる。
彼女が教師として、ホグワーツに戻ってきたのだ。

これが最後のチャンスだと思った。

今まで付き合っていた彼女たちとは全て縁を切って、俺はもう一度気持ちを伝えようと決めた。

今度は、弟じゃなく
1人の男として見てもらうんだ。







「コラそこ、お喋りしない」



闇の魔術に対する防衛術
元から好きな授業だったが、今年度に入って尚更好きになった。
何故なら担当教科の先生がエイルだから。
動くたび揺れる金髪、目を伏せたとき見える長い睫毛、透き通る声・・・
最近の学校生活で一番至福の時だ。

エイルに注意された男子生徒は少し嬉しそうに「すみません」と謝った。
思わず舌打ちをして、開いていた教科書を机の端に寄せ突っ伏した。
此処は後ろの席だからきっと教卓からは見えにくい。
その代わり此方からもエイルが見えなくなってしまうのだけれど。



「何苛々してるんだよシリウス」

「うるせぇ」

「男の嫉妬ほど醜いものはないよ」

「涙ボロボロ流して化粧崩した女の顔」

「ああ、あれはやばい」

「前言撤回だなリーマス」

「うん、ごめん
でも僕君より見る機会少ないから、よく分からないよ」

「厭味かよ」



こうして親友と小声で話しているうちにもエイルの授業は進んでいて、彼女が紡ぐ言葉を幾つも逃している。なんて勿体無いんだろう。

こつん、と頭の上に何かが乗っかった。
痛くはないけど少し重い。

ただでさえ機嫌が悪いというのに、誰だこんなふざけたことをする奴は。

今の自分は相当柄の悪い顔をしているだろう。
不愉快だという顔を隠すことなく突っ伏していた顔を持ち上げ、犯人の顔を見上げた。


思わず固まった。



「授業中の居眠りなんて随分勇敢ね
ブラックくん」



隣でジェームズが笑う声が聞こえるが、それすら気にならないほど吃驚した。
普通の先生は一番後ろの席になんかよっぽどのことが無い限り出向いたりしないのに。
教卓から此処までの距離は結構遠い。
あそこから居眠りしている生徒を見つけるなんて。



「次、見つけたら減点だからね」



そう言って再び無言呪文の説明に戻ったエイルの後ろ姿を見ながら、
俺は緩む頬を隠すようにもう一度腕に顔をうずめた。



「・・・もう一回居眠りしようかな」

「君いつからMになったの」

「いや、でもエイルの声を一字一句逃したくないから起きてよう」

「シリウスきもい」

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