ハリポタ長編2

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「姉さんを振り向かせるのは正直、とても大変だと思うよ。
年下なんて、ほぼ不可能に近い。」



そうきっぱり言い切ったのはハール・アウルヴァング
年は俺と同じ6年生
生まれながらの金髪に少し釣りあがった目、白い肌、気の強そうな物言い
いわずもがな、エイルの実の弟だ。

実際、俺の恋が実らないのはコイツのせいだといっても過言じゃない。
コイツと同じ学年にいる俺は、エイルから見れば弟同然。それ以外の何者でもないのだ。

目の仇にしている反面、エイルにアプローチするための助言を得るため時折相談を持ちかけたりもする。
その度親身になって話を聞いてくれるのだが、最後には必ず冒頭と同じようなことを言われるのだ。



「んなこと、やってみなきゃ分からないだろ」

「いろいろやってみて、この様でしょ」

「うるせぇ。大体8割くらいお前の存在が悪いんだ。
お前が居なかったらエイルももう少し姉御肌の薄い性格になったはずだ」

「酷いな。俺が悪いっていうの
こんなに君の話聞いてあげてるのに」

「そうだな、お前があと2、3歳下だったらもう少し変わってたかもな。
同い年っていうのが駄目だ。ハール、お前留年しろ」

「何故君の恋路のために俺がそこまでしなくちゃいけないんだよ」

「ああ・・・でもあの姉御肌のエイルが時たま見せる恥ずかしがってしぼんだ顔が堪らないんだよな・・・
気が強いくせに押しに弱いところもぐっとくる」

「一体姉さんになにしたんだ。」

「うん、ちょっとな」

「大体俺は君の恋を全力で応援してるわけじゃない。いつも言ってるけど、無謀すぎるし、振り向かせるのは至難の業だ。
姉さんは俺を本当に愛してくれてる。勿論弟として。
今のシリウスの立ち位置は俺と同じだよ。よっぽどのことが無い限り、それは変わらないと思う。」



ハールの言っていることは勿論理解できる。
エイルが俺に向ける視線はいつも呆れた表情。ときたま見せる笑顔も、まるで弟を慈しむかのような視線だ。(まるで女神みたいなのは否めない)

年の差、たった3歳の壁だ。
俺からしてみれば薄く見えるが、エイルからみれば相当厚い壁なのだろう。
6年生の俺だって、3歳年下の3年生はまだまだガキにしか見えない。きっとエイルもそんな感じなんだろうな。



「それに姉さんは・・・」

「?」

「・・・・・・」

「なんだよ、言えよ」

「・・・・・・ごめん今のちょっと無し」

「はあ?気になるだろ」

「忘れてくれ」

「いや、忘れねぇ
言うまで俺はお前に付きまとう。」

「・・・・・・はぁ、分かったよ」



溜息を漏らしたハールは先程と違って重たそうに口を開いた。



「あんまり騒ぐなよ。それと、面倒くさいから落ち込むな。」

「分かったよ。で?」

「姉さんは男を引きずってるんだ。本人は否定してるけど」

「・・・は」

「2年間ずっと」

「・・・・・まて、それって」



エイルは在学中に彼氏がいたって事か?
嘘だろう。男の陰どころか、噂さえ聞いたことなかった。

しかし、そうだ。
よく考えてみれば、スポーツ万能、成績優秀、首席で卒業したここ数年のグリフィンドール寮の中でもずば抜けて有名なエイル。マクゴナガルでさえも時折エイルを生徒の模範として演説をすることがある。
それに加えてあの容姿と性格だ。リリー・エバンズの憧れの先輩像でもある。

そんな彼女を、周りの男共が放っておく筈がない。
当時の自分はなんとかエイルと話をしてつながりを持とうと必死で、そんな事を気にする余裕もなかったと思う。

だがしかし、待て待て。
男を引きずっているということは、なんらかの理由があったとしても、エイルが振られたということになるのか。
エイルを振るなんて、一体どんな馬鹿野郎なのだろう。



「・・・その相手の、名前は?」

「一応言っておくけど、もうこの学校にはいないよ。」

「いいから、教えろよ」



2年間も引きずっているってことは、エイルが振られたのは6年生の終わりから7年生のはじめにかけて。
俺がエイルに出会った頃にはもう彼氏がいたって事だ。

そして別れてからもエイルは落ち込む素振り一つみせずに何ら変わった様子は無かった。もともと自分の弱みを人に見せるのを嫌う彼女からしたら、普通のことかもしれないが。
俺はあんなに毎日一緒に居たのに。何故気づけなかったんだ。

卒業式の日
初めてエイルに好きだと言った日

エイルは目を開いて少し驚いた顔をしてから、悲しそうに、申し訳なさそうに
それでも綺麗に笑って言った。



『ありがとう。ごめんね』








「ルシウス・マルフォイだよ。
姉さんの元恋人」



ああ、やっぱり俺
純血主義なんか嫌いだ。



「・・・へぇ」

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