ハリポタ長編2

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「あっ」



どん、と肩に伝わる衝撃に前を向くと、婚約者の彼女が慌てたようにごめんなさいと謝罪をした。
珍しく一人だ。次の授業に向かう途中だったのか、胸には鞄が抱えられている。
しかしその鞄からはありえないものが滴っていた。
水浸しだったのだ。



「本当にごめんなさい。あの、濡れたりしていませんか」

「ええ・・・大丈夫。
貴女こそ平気?その・・・随分と濡れているけれど」

「き、気にしないで。
ちょっと水溜りに落としちゃっただけなの」



嘘をつけ、昨日から今日にかけて絶好のお洗濯日和ではないか。
すぐに気づいた。名家の息子の婚約者なんてより取り見取りだ。
その中から彼女ただ一人が選ばれたのだ。怨みを買わずにはいられないだろう。

きっと私がルシウスとの仲を公にしていたならば、同じことになっていたはず。いや、それ以上かも。
公にしていたならば。
周りが知っていたならば。

そんな考えばかりがぐるぐると回る。



「・・・テルジオ」



杖を取り出して振ると、びしょびしょだった鞄の水気が幾分か取り払われた。



「インパービアス」



ついでに防水呪文もかけてやれば、目の前の彼女は瞳を輝かせる。



「ありがとう・・・!
今度御礼を・・・お名前を伺っても良いかしら?」

「・・・エイル・アウルヴァングよ」

「え、あの学年トップの・・・?
だからこんなに魔法をかけるのが上手なのね。
私呪文学あまり得意じゃなくて・・・恥ずかしいわ」



そう言って笑う彼女は本当に可愛くて
グリフィンドールのネクタイはもう目に入っているはずなのに、悪態をつく様子もない。
笑顔の彼女と反対にどんどん卑屈になっていく自分がとても汚く思えた。
早く此処を離れたい。



「御礼なんて、良いから。
じゃあ・・・私はこれで」

「あ・・・本当に、ありがとう!」



振り向かずに、歩いた。


ああ、もう



「・・・私は誰を怨めば良いのよ」

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