夫婦物語(昼)

□始まりの朝
1ページ/2ページ

春の涼しくも暖かくもある柔らかな陽気に包まれ、高杉の伏せた瞼がぴくりと震える。
緩く持ち上げて目を開けば目の前には無防備に寝顔を晒す端正な顔立ちの男一人。

ぼんやりとその寝顔を眺めていれば腰に回された腕の存在に気付き、振り返る。
自分を挟むように(実際挟まれているのだが)もう一人の男が気の抜けるような寝顔を晒していた。

(……ぬくい)

心地良く己を包む温もり、今さら気付いたが自分の手は二人の寝間着の裾をしっかりと握り締めていた。

(生温い感じだ)

つい最近まで血に濡れた生活を繰り返していた自分には不似合いな程に穏やかなこの瞬間。
これから始まる穏やかな日々。

「ん…」

微かに聞こえた声に桂の方を向けばぼんやりとした表情で自分を捉えて

「おはよう、高杉」

綺麗に笑って囁かれる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ