オリジナルU
□秘密組織"Monster"
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――それは、とある真夜中のこと。
摩天楼がそびえる都会の夜。
真夜中とはいえその街は明るく、空に星の姿は見えない。黒々とした夜の下で眠らないままの街。色鮮やかな灯りを見下ろすビルの屋上に、それは居た。
「――…こちらdragon<ドラゴン>。目的地に到着」
その声は至って普通の女の子の声だ。声の持ち主はそう言うと、通信機のボタンを押す。
ぷつ、途切れる音、それから砂嵐のようなノイズ音。続いて機械越しの人の声がする。
ザザ...
『こちらjaguar<ジャガー>。オーケイ、よーく聞こえる。』
手元の黒い機械を手慣れた手つきで操作し、それは屋上のフェンスの向こうに立っていた。風が足元を、体を、頭上を吹き抜けていくが、それに恐怖は見えなかった。
暗い眼孔の奥に光は届かず、夜風に黒の髪を散らせて。
「作戦を開始する。カウント準備を」
『カウント準備、スタンバイ』
「3」
『2』
いち。
そう呟くが早いか、手に持った機械をブレザーの胸ポケットに仕舞いざま、腿にもう片手を伸ばしながら前へ一歩を踏み出す。
虚空に伸ばされたスニーカーは街の空へと沈む。ゆらりと傾いでいく体、腿のホルスターから真っ黒い拳銃をするり抜いて、表情が見えないがきっとそれは、確かに笑っていた。
『…――作戦開始!』
耳に届いた声も、どこかしら愉しそうに嗤っている。
そんな"リーダー<頭領>"の表情が容易に想像できて、頭に被る異形の下、それは小さく微笑んだ。
『秘密組織Monster』
「………あの」
「なあに?」
「すいませんした」
「聞こえないなあ」
「すいませんでした!!」
それから数時間後のこと、街のどこかにある廃ビルの地下深く。
「まさか見張りがあと二人いるなんて思いもしなかっ…おぶう!!」
「あれほど慎重に行けっつったろーが!!」
「やめてー!胸倉掴まないでー!食われるー!」
「てめえみたいな不味そうなの誰が食うか!」
「落ち着いてレオ」
ライオンの頭部を持つ小さな姿、レオをなだめているのは、名前通りの狐のお面をつけたスーツ姿のフォックスだった。肩に届くか届かないかほどの髪の長さ、それがさらりと流れて首を傾けたのが解る。スカートから伸びる華奢な足や、同じように細く折れそうなヒールを履いた爪先など、なぜ狐面をつけているのかはわからないが。
宥められたレオはとりあえず口(顎)をつぐんだものの、その分一層不満げに鼻白んだ。眉間に寄った凶暴なしわに、床に跪きつつ胸倉をつかまれている方は恐怖のためか身動きしない。
狐面は両者を眺めて肩をすくめ、胸倉をつかまれている方――何かの生き物の頭蓋骨を被った少女へと歩み寄った。