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□ハロー、神様。
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 ――神、なんてものが世界には在る。


 人は神様の創造物だなんて言って信仰する者。そんな信仰心をカモに儲ける者。中にはつまらなさそうな目で、神こそが人間の創造物なんだと言って、はなから信じない人も居る。


 困った時の神頼み、なんてうまい言葉を作ったものだ。

 人は都合の良い時だけ神に頼り、結果次第じゃ逆恨み。それが秒単位で世界中に起きているのだから、少しは願いを聞いている者のことを考えて欲しい。毎日せっせと願いを聴いても、ボーナスひとつ出やしない。昨今は不景気だなんて人は言うけど、こっちは20世紀以上前から大忙しなのだ。


 そして僕はそんな世界で、神様なんてものをやっている。





   『ハロー、神様。』





 唯一神、絶対神、八百万の神。

 この世界は人にとってはあまりに広すぎるようで、僕には多くの名がついている。いや、本当に僕のことを指して言っているのかは甚だ疑問だけど。


 僕はちょいと手を動かして、空に浮かんでいた風船の紐の端を呼び寄せて掴む。

 そのまま立ち止まっていると、走ってきた人間の子供が僕の持つ風船を見て喜びの声をあげた。一緒にやってきたその子の親が、風船を子供に差し出す僕に向かって頭を下げる。


「ありがとうございます!高く飛んでいったかと思って、諦めかけていたところで」

「風が横に吹いたのかな。そこの滑り台に引っかかってたから良かったよ」


 風船を受け取って嬉しそうにする子供の頭を撫でる。

 照れ臭そうにはにかんで笑うその子へ、僕はゆっくり話し掛けた。


「君はどこから来たんだい」

「あっち!どうぶつえんに来ててね、これからおうちにかえるの!」

「そう。バス?」

「うん!」


 おおきなクルマだよ、と風船を握り締めたまま小さな腕を横に目一杯広げた、その子供の笑顔。

 僕は、何も言わずにその子の頭をそっと撫でた。


 
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