オリジナルU
□ハロー、神様。
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尋ねると、彼女は緩やかに笑んだまま目を閉じる。
「そろそろ、終わってしまいそうな気がするの。みんなには悪いけど、やっぱり駄目みたい」
「…そう」
「体の痛みも止まらないし、起きられる時間も短くなってくし。誰も何も言わないけど、自分のことは解るのよ。何となくね」
最後に少し悪戯っぽく、僕を見上げて彼女は笑った。
そんな彼女を見下ろしながら、僕はゆっくりと歩み寄る。
「じゃあ、今はどう?」
「今?」
「今は体が痛いかい?軋むように骨が痛むかい?」
彼女は少しきょとんとした後に、ぱちくりとまばたきをして唇を開いた。
「…痛くない」
「体は軽い?前みたいに両足で立って、床の上を歩けるかい?」
僕の言葉に従って、彼女はベッドの上に起き上がる。まるで夢を見ているようにどこか呆然としながら、ゆっくりと足を床に降ろした。
折れそうな両足が垂直に揃い、裸足が床にそっと触れる。
「…あ、」
彼女は震えながら立ち上がった。
ゆっくりとベッドから降りて、折れそうな足を一歩、二歩と進めて。そうしながら彼女は僕の方を振り向いて、そして震える声で呟いた。
「歩ける、…」
僕はただ頷く。
足と同じように細い腕を持ち上げ、その両手を見つめて彼女はしばらく呆然としていた。
やがて震える手をぎゅっと握ると、彼女は僕を見てやっと笑った。
その頬から一筋の涙が落ちる。
僕は黙ったまま、ぐっと唇を噛んだ。
「私、死んだのね」
頬から伝い落ちた涙は、床に吸い込まれる前に宙で静かに消えていった。