オリジナルU
□ハロー、神様。
2ページ/10ページ
僕は神様で、彼らは人間で。
人間に出来ないことが僕らには出来て、僕らに出来ないことが彼らには出来る。でも彼らはそれを知らない。
「ばいばーい!」
嬉しそうに風船を持った方の手を上げながら、子供ははしゃいで僕に挨拶をした。今度は飛ばさないよう、輪っかにした紐を手首に引っ掛けて。その子の手を引きながら、お母さんも笑顔で一礼する。
2人は仲良く手を繋ぎながら、走ってきた道を戻っていった。
僕は黙って立ったまま、軽く片手を上げて、ぽつりと「さよなら」を呟いた。
あの子はこの後、事故に遭って死ぬだろう。
僕には解る。解ってしまう。
だってそれが神様の宿命で、役割で、束縛なのだから。
「…さて。次はあっちかな」
独りごちて、一歩を踏み出す。
そのまま下へと下ろした足は、白く清潔な部屋の床を踏んでいた。周りはあっという間に真っ白で無機質な風景に変わる。
白い壁で囲まれた中には白いベッドと白いシーツ、そして白い顔をしてそこに横たわっている人。
「やあ、こんにちは」
「…あら、こんにちは。新しいお医者さんですか?」
「ううん、違うよ。そう見える?」
横たわったままのその人は、青白い顔を緩ませて力無く笑った。
「白衣を着ていたから」
僕は自分の格好を見下ろして、ふーむと首を傾ける。
「本当だ」
「ふふ、変な人」
「お医者さんだったら良かった?」
そう問いかけると、彼女は横たわったまま視線を僕に向け、少し瞬きをした後にまた笑った。
「そうね」
「どうして?」
「もしかしたら助かるかもしれないから」
「なるほど。君はもう治らないのかい?」
「余命は3ヶ月らしいわ。そう言われたけど、実のところあまり信じていないの」
「ふうん。そりゃまた何でだい?」