オリジナルU
□もう一度、
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にっこり笑っている彼女の手には、いつの間にか可愛らしい布包みが提げられていた。それを私の顔の前にぶら下げ、穂純さんはこの前のことなんて無かったかのようにあっけらかんと笑う。
「嫌な思いさせちゃったことのお詫びに作ってきたんだ。いつもお昼食べてないみたいだし、どーぞ」
「………」
要らないと断ろうとすると、それを見越したかのように彼女は布包みを私の膝の上に置いた。置かれた重さが私の動きを止めさせる。
穂純さんは隣に座って、背負っていたリュックをそのあたりの芝生にぽいと投げる。
「それ私の分も入ってるからさ、一緒に食べようよ」
「…」
「はい決定。さあ開いて開いて」
有無を言わせぬ笑顔と気迫。
私は抵抗を諦め、ふっと息を吐きながら布包みの結び目をしゅるりとほどいた。中から出てきた普通より少しだけ大きいお弁当箱を出して、私はそれを彼女に手渡す。
「いーよ、お先にどーぞ」
でも私は首を横に振って、そのまま弁当箱を押し付ける。穂純さんは困った顔で手に取って、そして私の顔を見た。
私は促してから、ぎこちなく笑う。
「…後で食べる?」
頷く。
穂純さんは納得したように笑うと、そのまま弁当箱の蓋を開けた。ぱかりと開いた赤色のお弁当の中には、色々な具が鮮やかに入っていた。
「形はあんまり上手じゃないかもしれないけどさ、味は自信あるんだー」
朗らかな口調で言いながら、穂純さんは箸を出して卵焼きを一つつまんだ。もぐもぐと口を動かしながら、もう一つを箸でつまむ。
そして彼女は、それを私に向かって差し出した。やけに良い笑顔だった。