壊滅的組織
□春眠暁を覚えず
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厳しい冬を越し暖かな季節がやってきても、彼らに春が訪れることはない。
世界征服を企む彼らは、今日も今日とて壊滅的な日々を過ごすのである…。
「やっぱりこの季節になると眠くなるな、うん」
「粘土に突っ伏しながら寝てろ」
「確実に窒息死するじゃねーか」
「オレの知ったこっちゃねーんだよソォラァア!」
「ひでぶっ!!」
春のうららかな陽気につい瞼が重くなったデイダラ。起爆粘土にチャクラを混ぜていた矢先、隣にいたサソリはデイダラの頭を掴み粘土に叩きつけた。ぐにゃりと歪み、デイダラの顔を刻む粘土。
「……おい鬼鮫、そこを何だと心得る?オレの特等席だぞ。退け、というか起きろ鮫コルァァ」
その頃イタチは自分の特等席(らしい)のソファーに座り眠る鬼鮫を起こそうと奮闘していた。だが鬼鮫に直接は触れたくないらしく、声をかけるだけに留まっている。
「チッ、澄んだ青空みたいな顔色しやがって。お前の血はブルーハワイか。」
なかなか起きない鬼鮫に業を煮やしたのか、舌打ちと共にイタチは訳のわからぬことを言った。眠気を誘う陽気のためみんなテンションがおかしい。
「お困りかいイタチ、リーダーにいい考えがあるよ」
鬼鮫の髪を引っ張るという地味な嫌がらせを始めたイタチの元にリーダーが近寄る。その手には数本の油性ペンが握られており、イタチはリーダーを見てニヤリと笑った。
「ぶふっ!ちょっ、やりすぎじゃねーか?」
「何を言う、これからが本番だ」
「待て待てお前達。オレにもやらせろ」
「ナイスセンスだなイタチ」
数分後。いまだ眠る鬼鮫を囲み、イタチとリーダーを中心としたメンバー達が鬼鮫の顔に落書きを施していた。まるで中学生の修学旅行みたいである。
角都がだるまの如く瞼の上に目を描きイタチは額当てを外して肉と書いた。それを見たデイダラと飛段は腹を抱えて笑い、イタチ、リーダー、サソリの三人はプスプスと笑いながら落書きを続ける。トビは心底可哀想に鬼鮫を見つめながらも、あまりの落書きの激しさについに噴き出した。小南は平然としているが小さく肩を震わせていて、ゼツに至ってはすでに笑いが止まらなくなっているようだ。
「ぶはっ…こ、こんなもんか?」
「まだまだだぜリーダー。ちょっとペン貸しな。」
リーダーは鬼鮫の鼻の下にたくましすぎるヒゲを描き満足したように腹を抱えたが、サソリはまだ足りないといった面持ちでリーダーからペンを借りた。
「ソォラァアオレ様の芸術をその身に刻んでやるぜぇぇぇ!」
高らかに笑い、サソリは眉毛を太くしたりアゴを二重にしたりした。あちこちでブハッと噴き出す声が聞こえる。角都すらもプルプルと身体を揺らして笑う。
「ふん、男前が増したじゃないか鬼鮫…ぶ、ぶふっ…このオレが直々に終止符を打ってやろう…」
イタチ、笑いが止まらず上手く口が回らない。イタチは持っていた団子の竹串を両手に構え、鬼鮫の鼻の穴に(脳を貫かない程度に)突き刺した。
顔中に落書きされ、おまけに鼻に竹串をぶら下げる鬼鮫。メンバーの笑いのツボを捕らえるのにはあまりにも十分すぎる。
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