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□月飼い
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話は廻り数年前の事。


その頃僕等は年季が入り古ぼけた小さなアパートに二人で住んでいた。
鉄製で足早に駆け昇ればカンカンと音をたてる階段や、茶色の古ぼけたドアにいつしか愛着を持つようになった辺りから二人での生活を始めたんだ。

籍はまだ入れていなかったけどもう長く一緒にいたから事実婚と世間では言ったのだろう。隠す事もなくゆっくりと互いを確かめ合いながら暮らしていた。


僕は小さな会社に勤めていたからあまり暮らしは楽ではなかった。でも些細な事を二人で喜びまた些細な事で泣きもした。
変わる表情も季節もまた幸せだと想えていた。
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