短編小説
□眺めているだけ
1ページ/2ページ
「石田…」
紡がれた言葉はただ虚しく消えてしまう…。
カーテンをあければ、満月に近い明るい月が顔をのぞかせる。
ベッドに仰向けに寝転がり、想うわいつも彼のことばかりだった。
男同士だとかなんて関係なかった。
【好き】と思う気持ちが何より大きかったから。
でも、正直に伝えるなんてこと、俺なんかに出来るわけもなく…。
ただ、今は月を眺めているだけだった。
今の俺には月のように彼奴を眺めているだけしかできない。
はがゆくて仕方がない。
でも……。
汚したくない
募る想いを押さえろ
そう思える自分と
箱に閉じこめ
誰にも見せたくない
と思う自分がいた