狂想曲

□狂想曲・後編
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それを聞いてもまだ状況が理解できていない俺に、シズちゃんは今度は心配そうに眉根を寄せる。
「お前、最後に会った雨の日、路地裏でぶっ倒れてたの……憶えてないのか?」
「?」
俺は小首を傾げて思い出そうとした。確かにシズちゃんに最後に会った日は、路地裏で意識が途切れている。でも波江は、俺は自力で帰ってきて、玄関で倒れてたって…。意識が朧ながらに無事に帰りついたのだと思っていたんだけど。

「あの後、手前が変な様子だったからつい気になって、捜して。……そしたら手前がぶっ倒れててよ」
「……え…」
「あのまま放っておいて死なれても癪だし、取り敢えず手前を背負って新羅に診て貰いに行ったんだよ。ま、只の風邪のひき始めだったんだけどな」
「シズ、ちゃ…」
「で、まだ意識が戻らなかったから、俺がここまで連れて来てやったんだよ」
信じられない事ばかりで、頭が混乱状態から抜け出せない。
え?という事は、シズちゃんは俺を助けてくれたっていう訳?
いつも俺に怒ってばかりいる、シズちゃんが?それに尚且つ、こうやって様子も見に来てくれているの?
何だか、夢でもみているみたいだ。

変な高揚感と、鼓動と、恥ずかしさ、嬉しさ、そこら辺のものがすべてごちゃごちゃになって、俺の頭の中を支配する。
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