狂想曲

□狂想曲・前編
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「シズちゃん、今日はいないな」

俺は池袋の人波に沿って歩きながら呟いた。
いそうな所を一通り探してみたけど、居なかった。
せっかく暇だったから池袋に着てみたけれど、張り合いがなければつまらない。
「そんなに取り立てって、流行ってるのかなぁ?…っていうか、テレクラが地道にはびこってるって方が正しいのかな?ま、どっちでも同じようなモンだけど」

「無駄足、か。…まぁいいや。また今度倍返しにしてからかおうっと」
そう呟いて踵を返した俺だったが、直ぐにその足が止まった。
通りを真っ直ぐに進んでいった先の角から、シズちゃんが現れた。隣には上司のトムさんとかいう人がいる。そこら辺には確かファーストフード店があったから、お昼御飯でも食べて出てきた所なんだろう。
話に夢中になっているからなのか、俺がいる事にはまだ気付いていないみたいだ。

話しながら、シズちゃんとその人は笑っていた。
それを見ながら俺は、何だか胸の奥が気持ち悪いと感じる。

「(……変なの)」
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